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ルート
さて、ここでマリア、ルートの二人の過去ついて少し紹介しておこう。
まずはルートの過去から。
「おいルート!この野郎っ!!起きやがれっ!!」
「ハッ!……………す、すみません、 今朝食を作ります。」
ルートがまだ8歳だった頃、マーランというルートが居た国にあった金鉱山を目的として、ブスカルという大国が攻め込んだ。マーランは死力を尽くして抵抗したが、ブスカルの圧倒的な軍事力にはとても敵わず、国土を全て奪われ、女、男、さらには子供までもが奴隷として売られた。今ではブスカルの金山戦争と言われている。
そしてルートはこの卑劣な男デムスに奴隷として5アーズ(約300円)で買われたのだった。
「この糞が!奴隷の分際で何主人より遅く寝てんだ!飯食わせてやってるのは誰なんだよっ!!」
その瞬間、とうとう我慢ができなくなったのか、ルートはデムスを鋭く睨みつけた。
「な…てめえ何か文句が……」
「てめえなんかの…」
「あ…あ?」
「てめえなんかの奴隷を、何で俺がやんなくちゃならねぇんだよ!!」
「あ……!?そ、そりゃてめえは奴隷で…」
「何が奴隷だよ!8歳の頃にたった5アーズで買われてからずっとタダ働きか?そもそも俺は金山戦争の事なんか覚えていないんだ。俺が何をしたってんだよ!!俺達奴隷の事を人間じゃねえみたいに扱いやがって…ああ、正義もクソもありゃしねえ!!!」
昨日まで従順だった「奴隷」がいきなり反抗したから、デムスは驚いてしばらく声が出なかった。やっと落ち着きを取り戻すと、
「へへ、まあちょっと落ち着けや。今日は俺と同じ飯を食わせてやるからよ。」
なんて言い出した。
「あー糞、……!本当にお前は根っから先っちよまで腐りきってやがんな!
なあお前、世の中のゴミ、死んでも誰も葬式に来てくれなくて、いずれ誰かを殺すかも知れないような本当のクソ野郎って、生きてる価値あると思うか?」
「あ…あ!?何言って…」
「お前みたいなクソ野郎は生きてる価値あんのかって聞いてるんだよ。
いや、いや!お前は死んだ方が世のためだ!そうだよな…な、なあ?」
「おいお前本当にさっきから何言って、」
デムスが言い終わらないうちにルートは手を動かした。手の先は、ライフルが置いてある戸棚だ。
「お前やめろ!本当にてめえ犯罪者になるぞ!」
「例えこれで俺が捕まったとしても…正義のためなら悔いはない!」
ルートはおもむろにライフルを取り出した。
「やだぁ!俺まだ死にたくねえよお!ルートさまあ、お助けを〜。」
「……屑が。」
辺りに銃声が響き渡る。
「てなかんじっすわ。すんません。ちょっと暗くなっちゃいましたよね。」
「いや、別にいいんだけど…大変だったんだね。 あれ?」
ふと視線を動かすと、マリアが頭を下に落としていた。
「あれ?マリアちゃん、あまりの俺の過去の壮絶さに泣いてる?泣いてるん?え?」
「…………ッ!?え、何だよ。」
「何だよって…まさかお前、寝てたんじゃねえだろうな?」
「アタシ?いや、寝てたけど。」
「ふ……」
急に空気が変わったので、大知は失笑した。
「何だよてめぇこら!!ちょい表でろやあ!!」
さて、次はマリアの紹介の番だ。
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