山田の友達の東雲君のままでよかったのにな。

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二人っきりになり、保健室が静かになる。 話したことも無いクラスメイトとの空間が少し気まずい。 山田は顔を腫らせ、鼻にティッシュを詰めた情けない姿のままソワソワしていた。 山田って多動症か? それに、何か鼻をヒクヒクさせている。 匂いを嗅いでいるような動き。 ティッシュ鼻に詰めてるのに匂いなんか分かるのか? 何だか山田が不思議な生き物に見える。 ああ、不思議な生き物に見えるじゃないわ。 不思議な生き物なんだ、山田は。 僕は揺れるカーテンの乾いた音と校庭の土臭さを含んだ生温い風を感じながら山田に聞いた。 「…なんであんな事した?」 ただのクラスメイト。 ただの隣の席の同級生。 話したこともない相手。 なのにどうして山田が新堂に喧嘩を売り僕を庇ったのか分からなかった。 だって山田に特なんかないんだから。
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