山田の友達の東雲君のままでよかったのにな。

10/21
前へ
/52ページ
次へ
次の日、空っぽだった席が埋まっていた。 褐色の肌に大きな絆創膏を貼った山田が、そこにいた。 まだ顔の右側が腫れていて青痣もできていた。 その姿にクラスメイト達が駆け寄る。 大丈夫か?とか、痛むか?とか。 手のひら返しが凄かった。 その中には新堂の取り巻きもいた。 新堂の天下が終わった瞬間だった。 僕は駆け寄るクラスメイト達の間から山田を呼んだ。 山田は犬の様にすぐ反応し、僕を見つけるとニカっと笑った。歯並びの良い歯を剥き出しにしながら。 うわっ、不細工。 「お、おはよう東雲!」 「おはよう山田。怪我の具合は?」 社交辞令で体調を気遣うと、なぜか山田は嬉しそうな顔をした。 やっぱり山田って不思議生物。 「大丈夫!歯も差し歯したし、あとは青タンが治れば無問題!」 「そっか。よかったな」 冷めた感じで山田にそう言って俺は自分の席に着いた。相変わらず山田は嬉しそう。 なんだか本当に犬みたいだな。 「なぁ山田、これあげる」 囲まれる山田の机に僕は購買で買ったあんぱんを投げた。見事あんぱんは山田の机の上に着地。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加