山田の友達の東雲君のままでよかったのにな。

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そして、出会った。 マイナーな漫画を二冊持った、背の高い男に。 左と右で表情の違うその人は山田の知り合いだった。 久しぶりと言い合いながら会話をしている二人を僕は見ていた。 正しくは二人ではない。 山田の知り合いを見ていた。 香水の香りと癖っ毛。色白の顔には可愛らしいそばかすがある。見た目の割に声が低いあの人が頭の中で浮かんだ。 じわりと目元が熱くなる。 心臓がジリっと焦げる。 目が離せない。 山田が背の高い知り合いに手に持つ漫画のタイトルを訪ねた。僕の口がその質問に勝手に食いつく。 「プリモ」
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