山田の友達の東雲君のままでよかったのにな。

13/21
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
山田が僕を見た。 僕は背の高い彼を見た。 彼も、僕を見ていた。 そしてにこりと微笑む。笑窪が可愛らしくへこむ。 そばかすが花びらに見えた。 「よく知ってるね。もしかして読んだことある?」 耳心地のいい声が僕にそう聞く。 その声が脊髄に響いた。 「漫画は読んだことないけど、小説ならあるよ」 「え?これ小説あるの?」 「う、うん」 「へぇ。ありがとう教えてくれて。今度買ってみるわ」 短い会話だったが、物凄く緊張した。 心臓が跳ねて痛い。 「名前なんていうの?」 彼に名前を聞かれて、手のひらが汗ばむ。 僕は乾いた口を開いた。 「東雲。東雲帳です」 「かっこいい名前だね。俺は成島雲雀って言います。山田とは中学の同級。よろしくね東雲君」 同級生のはずなのに大人びた口調と落ち着いた雰囲気だから、何だか年上に感じた。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!