山田の友達の東雲君のままでよかったのにな。

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なのに神様は意地悪だから。 気づけばもう卒業式を迎えていた。 相変わらず山田とは仲良くしている。 茨城県に越してきて二年程が経ったが、相変わらず馴染めない。山田以外の友達もいないまま僕は今日高校を卒業する。 泣いている同級生に気持ちが冷める。 死に別れでもないのに泣くなんて馬鹿だ。 思い入れのないこの学校を卒業する事に何の悲しみも寂しさもない僕は、卒業式が早く終わることを望んだ。 寒い体育館で長々しい儀式は終わり、僕はやっとこの学校から解放された。 「東雲ぇぇ」 学年が変わり別々のクラスになった山田が僕のクラスを泣きながら訪ねてきた。 その姿が気持ち悪い。 「しゃ、写真撮ろうぅぅ」 「う、うん…」 山田のお母さんが俺と山田にカメラを向ける。 山田は鼻水と涙でぐちゃぐちゃな顔のままピースサインをしていた。 その姿が面白すぎて僕は笑った。声を出して。 あの時の写真はワンルームの狭い部屋に飾っている。 駅から徒歩30分の木造アパートが今の僕の家。
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