山田の友達の東雲君のままでよかったのにな。

17/21
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
卒業後僕は柏に引っ越した。 家賃の安い木造ボロアパートに。 今はバイトを掛け持ちしながら生活をしている。 進学はしなかった。行きたい大学がなかったから。 本当は美大に行きたかったが、やめた。 絵なら趣味でやればいいと思ったし、自分の絵がお金になるとは思えなかったから。 時々気分で描く油絵を部屋の隅にぶん投げたまま僕は暮らしている。 一人暮らしに慣れてきた頃、初めてインターホンが鳴った。 来客の予定がなかった僕は恐る恐る玄関に向かいドアに付けられた小さなドアスコープを覗いた。 「え?」 思わず声が出た。 ドアスコープにはずっと前に一度だけ会った事がある成島君が立っていた。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!