山田の友達の東雲君のままでよかったのにな。

19/21

43人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
成島君は笑った。口角を片側だけ吊り上げながら。 その顔が妖艶でお腹の奥が熱くなる。 ジリジリと心臓が焦げる。あの時みたいに。 伸びた髪をハーフアップにし、ゆっくりと顔を近づける成島君はからかうような顔をしていた。 僕は何をされるのか分かった。 このまま僕が離れなければ、成島君は… 体の一番深い場所から警告音が鳴り響く。 理性が避難しろと忠告する。 早く離れなきゃいけないと脳みそが神経を使い僕に伝達する。 なのに体は動かなかった。 僕は、学ばない人間なんだ。 苦くて煙たい匂いが鼻腔を抜ける。 唇にタバコの味がつく。 少し濡れていて柔らかい成島君の唇が僕の唇を食べる。何度も何度も。鯉が餌を求める様に。 唇が離れた時、お互いの間に透明な糸が引いた。 成島君は優しく笑って頭を撫でた。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加