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成島君は笑った。口角を片側だけ吊り上げながら。
その顔が妖艶でお腹の奥が熱くなる。
ジリジリと心臓が焦げる。あの時みたいに。
伸びた髪をハーフアップにし、ゆっくりと顔を近づける成島君はからかうような顔をしていた。
僕は何をされるのか分かった。
このまま僕が離れなければ、成島君は…
体の一番深い場所から警告音が鳴り響く。
理性が避難しろと忠告する。
早く離れなきゃいけないと脳みそが神経を使い僕に伝達する。
なのに体は動かなかった。
僕は、学ばない人間なんだ。
苦くて煙たい匂いが鼻腔を抜ける。
唇にタバコの味がつく。
少し濡れていて柔らかい成島君の唇が僕の唇を食べる。何度も何度も。鯉が餌を求める様に。
唇が離れた時、お互いの間に透明な糸が引いた。
成島君は優しく笑って頭を撫でた。
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