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「山いっぱい! 川にお魚いっぱい! 薫蘭風お姉ちゃんの実家大きい!」
僕はキャンピングカーを降りるなり、ついはしゃいでしまう。
「翡翠くんだね? 川遊びしておいで」
気付かないうちに横に着物のおばさんがいた。
「お母さん、ただいま!」
薫蘭風お姉ちゃんがそう言ったので僕は頭を下げようとしたら誰かに抱き締められた。
「君が翡翠くんか! 瑠璃くんを超ブラコン化させただけあってやはり可愛いな!」
「おじさん、久しぶりです」
瑠璃お兄ちゃんがペコリと頭を下げる。
「これ粗品ですが」
瑠璃お兄ちゃんが菓子折りを薫蘭風お姉ちゃんのお父さんに差し出すと僕を放してくれた。
「瑠璃くんは本当しっかりしてるなぁ。あれとは別だな」
薫蘭風お姉ちゃんのお父さんがチラリとへべれけになっている伊織先生を指差す。
「俺は親父に言われた通りにやってるだけですから」
「はは。それでもだよ。親父さんはどこだい?」
そう言われてお父さんの姿を探すと川辺で香多お兄ちゃんと追いかけっこしていた。
「あははーー。捕まえちゃぞーー!」
「やーーん。おじさま怖いーー!」
「えと、相変わらずああですね」
「瑠璃くん、心配するな。安全なへんたいなのは分かってるから。翡翠くんも川遊びしておいで。薫蘭風と瑠璃くんは、話聞かせてな」
薫蘭風お姉ちゃんのお父さんと薫蘭風お姉ちゃんと瑠璃お兄ちゃんは家の中に消えていく。僕は靴と靴下を脱いで川遊びをすることにした。
「冷たーーい」
「深いとこ行かないようにね」
「俺らもついてるから」
うた先生と良お兄ちゃんも裸足になって僕に付き合ってくれる。
タッくんと五丁目さんは川釣りのために更に上流に上っていって他のメンバーはキャンプの準備だ。
「お魚キラキラ」
「それはウグイですね」
「へぇ。捕まえられるかな?」
「翡翠くんじゃ無理かな? ヌルヌルしてるし」
「えー。えい!」
うた先生にそう言われたけど捕まえようとしたウグイはスルリと僕の手を抜けていった。
「いつか捕まえられるようになるかな?」
「大丈夫だよ。瑠璃くんだって苦手な会計やってるんだから」
「えーー。瑠璃お兄ちゃんのお仕事はモデルだけじゃないの?」
「モデルだけじゃないんだよ。伊織先生の方針でモデルもモデル以外の仕事をさせてるんだ。
モデルを辞めても仕事がなくならないようにね。仕事面に関しては尊敬できるね」
「ふうん」
その伊織先生は川辺で薫蘭風お姉ちゃんのお母さんに土下座している。
「たった577人じゃん! 許してよ!」
「許せる訳ないでしょ!? 一年で577人ってどうやったらできるのよ!」
「今だけ! 今だけだから! 翡翠くんをお嫁さんにしたら辞めるから!」
「姉さん、バカなの? 十歳の小学生をお嫁さんにするとか、逮捕されるからね! 今まで大人の女の子ばかりだったから説教で済ましてるけど!」
「だって女体化した翡翠くん、あーーんなに可愛いんだよ?」
「可愛かろうが子供に手を出すんじゃねぇーーーー!!」
薫蘭風お姉ちゃんのお母さんの声が空に響き、こだまになって何回も聞こえてくる。
「うた先生、伊織先生を尊敬できるの?」
「仕事面に関してだけだから。翡翠くん、ちゃんと気をつけようね」
「はーーい」
僕が返事をすると、伊織先生の声が飛んでくる。
「見てみて! あんなににょた翡翠くんの生足セクシーなのよ!」
「てめぇはどんな目で翡翠くんを見てるんだよ!」
伊織先生と薫蘭風お姉ちゃんのお母さんとの喧嘩はまだまだ終わりそうじゃない。
キャンプとバーベキュー楽しみだなぁ。僕は他のことを考えて現実を見ないようにした。
八月に続くよーー!
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