竹田京子

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竹田京子

竹田は森に「私が入社する前に私の隣の席に座って働いていた人の事を教えてください」 そう何度も言ったが「それだけは俺の口からは言えない。そのうち落ち着いたら教えるよ。まだあの時の事は、思い出したくないんだ。」 そう言った。 竹田は諦めて「そうですか~。時期が来たら教えてください。」 そう言って自分の席に戻ろうとしたその時だった。 竹田は激しい目眩に襲われ、その場に倒れてしまった。 「みんなの声が聞こえる」 「竹田大丈夫か?」 「森先輩?」 「竹田先輩大丈夫ですか?」 「山内君?」 「救急車早く社長!」 「田中先輩身体が動かない。身体が」 「私はどうやら救急車に乗せられたらしい。なんだか眠くなってきた」 気がつくと私は病院のベットの上だった。 「竹田、竹田大丈夫か!」 「今先生呼んで来るからな」 「先生、先生竹田が目を覚ましました。」 先生は急いで病室に入ってきた。 「診察しよう。これは見えますか?見えたら頷いて、うん、脈も正常だし、これで安心だ。二週間もすれば退院できるだろう。」 先生はそう言った。 「後で本人に病気の事をお話しします」 そう言って病室から出ていった。 竹田は聞いた「森先輩。私、どのくらい眠ってい たんですか?仕事が、お客様の訪問が~。 書類をパソコンで整理しないと。  どうしよう。 お客様を怒らせたんじゃあ? すぐ会社行かないと。」 「いいか。竹田、落ち着いて聞いてくれ」 森は言った。 「お前が眠っていたのは三ヶ月だ。」 竹田は驚いた。 「三ヶ月?そんなに?」 「竹田最後まで聞いてくれ、あの日救急車でお前をここに連れてきたのは、俺と山内君だ。 俺達はその日、担当の先生に聞いたんだ。 竹田は過労で肝臓も胃腸も弱っている。 それで検査やら点滴やらしたんだけど、 疲れが溜まっていたらしく竹田は意識不明だったんだ。今まで。ずっと。そこに他の社員が来て」 「竹田さんがいないと仕事どうなるのか?」 「パソコンの書類の整理も先にしないとー。」 「お客様まわりもしないとー。」 そう話していると、山内君が言ったんだ。 「パソコンの整理は私が全てやります。 私に任せてくださいと」 「俺は心配になり、パソコンの作業を俺と山内君でやり、他の仕事は、他の社員に分担して竹田の仕事は全て終わったから安心して大丈夫だ。」 「ここからが本題だ。 俺は山内君とパソコン作業をしていた。」 「山内君はパソコンができるんだよ」 竹田は「そう。パソコンできるようになったの。 良かったじゃない。相当努力したのね。」 竹田は喜んでいた。 森は「そんなレベルじゃないんだ。 ブラインドタッチがすごい速さでできるんだよ。 俺の何倍もの早さなんだよ。」 「あいつは、竹田が入院してから人が変わったように仕事ができるんだよ。」 「そればかりじゃない。 あいつは~、知らないはずのお客様の名前や好みを全て知っているんだよ。」 「まるで、別人みたいなんだよ」 「この前もお客様の手土産を買おうとした時~ 笠倉様はそのお店じゃなくコンチェルンのお菓子が好きなんですよ。並んで買って置きました。」 「そう言って手土産を用意してくれてたんだよ。 そのお陰でお客様は喜び、並ばないと買えないので嬉しいと言ってくれて、大口の商談が成立したんだ」 「他にも、笠倉さんの家は竹田も知っているだろう?初めて行く人は必ず迷う。 なのに山内君は迷わずに私の前を歩いたんだよ。それも早足で」 「その事を、俺は今日はありがとう。 今度飯でも奢るよ。 そう言ったんだけど、山内君は全て覚えてないんだよ。 ずっとこの一人部屋でパソコンの練習をしていたっていうんだ。 そこで、俺はじゃあ今パソコンで文字を打って。 そう言って、パソコンをやらせてみたんだよ。 そうしたら、山内君は全くパソコンが出来ないんだ」 「帰宅時間近くになると必ず誰もいない部屋に入り、覚えてないのに。 出勤した時は竹田の隣の席に座ってバリバリ仕事をしてるんだよ。」 「社長には森君、山内君をまだこの部屋でパソコンさせてるのか?元の席に戻すように言ったんだが」と怒られる始末だよ。 「それに最近のあいつの会社での活躍は、社長にも認められて、臨時ボーナスをあげるとか言われてたよ。 でも、山内君は何もしていない。この部屋で一人でパソコンの練習をやっていただけだって言うんだ」 社長には「自慢しないところがいいね。 もう、辞めるなんて言わないでくれよ」 と言われて、今では社長のお気に入りだよ。 森はそう話した。 竹田は森に言った。 「本当はパソコン初めからできていたのに、できない振りをしていたんじゃないの?」 「とにかく会社に来れば全て分かるよ。」 「いったい?どういう事なのか?」 竹田にもわからなかった。
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