山口優也2

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山口優也2

私と森先輩は飲食店「夕暮れ」のテレビを見て漠然とした。 「山口優矢」は人質をとって包丁を振り回している そして、何かを言っている。 「東京本社温か保険」の玄関の前で「俺を馬鹿にしやがって!」 私はそう言っているのが聞こえた。 森先輩も、そう聞こえたに違いない。 これは、夢なのか?現実なのか? 分からなくなっていた。 「中にいる社員は無事なのだろうか?」 「怪我をしていないのだろうか?」 私は心配で森先輩の声が聞こえなかった。 会社の回りを警察官が取り囲んでいる。 たまたま会社の前を通りかかった若い主婦らしい 人が人質になっている。 「緊急生放送! 山口優矢の時と同じ大事件!」 そう見出しに書いてあった。 森先輩が何度も呼ぶ声がやっと私には聞こえた。 「おい!大丈夫か?竹田、おい竹田!」 今「山口優矢」の事を話そうとしたんだぞ。 「ごめんなさい。私、怖くなってしまって。 山口優矢の事を教えてください。」 「いいか、落ち着いて聞いてくれ。 これから話す事は、とても恐ろしい事実だ。」 「竹田が入社する前、「山口優矢」という新卒の若い青年が入社してきた。 そいつは、はじめからパソコンの早打ちが他の社員より速くて、とても明るく気遣いのできる青年だった」 腰も低く穏やかな性格で、冗談もいう。 みんなに好かれている人気者だった。 そればかりか、先輩を出し抜いて、いつも営業成績がトップだった。 彼を嫌う者はいなかっただろう。 あっという間に東京本社第三営業部のリーダーに 抜擢された。 ところが上司は……。 「山口優矢」に第三営業部の成績を三ヶ月で50人を目標にしろ!」そう命令した。 優しい優矢は、それでは部下が可哀想です。 そんな目標言えません。 そう、はじめて上司にたてついた。 それと同時期に部下でパソコンが出来ない奴がいて、上達させるように厳しく言われたんだ。 その他に指名が来る御客様の対応で「山口優矢」は くたくたになっていた。 それでも弱音を吐かず、社長のナンバー2になっ たんだよ。 ところが、前の社長は山口に無理難題を押し付けて ゴルフ三昧だった。 その頃、寝るまもなく山口は働いていたのに。 くたくたになった山口は前社長に文句を言った後 「俺を馬鹿にしやがって!」そう叫んで包丁で社員を次々と刺したんだ。 そこを現行犯で逮捕されたんだ。」 「ちょっと待って?前社長って、前の社長は?もしかして?」 「そう、出血多量で亡くなったよ。幸い他の社員は助かったが、後遺症が残ったり、傷が残ったりしている者が多かった。 ほら俺も腕に縫った後があるだろう。 今の社長は前社長の弟なんだよ。 そして前の社名は「ゆったり保険」だったんだよ。 そして場所も別のところにあったのさ。 新聞に大きく出てしまい。 東京の下町に引っ越して社名も変えたんだよ」 「そんな事があったなんて知りませんでした」 「それだけじゃないさ。山口が捕まったあと、引っ越した会社に机や椅子を前の会社と同じように配置したんだ。 そして竹田の隣に山口の机と椅子を置いたんだ。 あの事件の後たくさんの社員が、辞めて行ったので、大勢の人を雇ったんだ。 ところが山口の席に座った人はみんな辞めて行くんだよ。それも3日で。 不信に思った社長が聞いたんだ」 「何故辞めるのか?」 と、「そしたら幽霊を見たと言うんだ」 「それってもしかして?」 「そう、幽霊じゃない。山口優矢の生き霊だよ。 あの時あいつは刑務所にいたはずなんだから。 残業していると首を絞められたり、 仕事の邪魔をしてくるらしい。 今まで山口優矢の席に座った人はみんな仕事ができる人だった。 今度の山内君は全く仕事が出来ない。 だから身体を乗っ取られてしまったんだよ。 私は、なおさら会社の中にいる社員の事が心配で たまらなかった。 社長は無事なのだろうか? これから、会社はどうなるのだろうか? 本当に山口優矢の事件の真相はこれだけなのだろうか? 私はまだ、他に何か理由があるような気がしてならなかった。 もっと根深い何かが~。
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