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寝泊まりする部屋は俺の寮室らしく申し訳ないが蓮には今日咲野先輩が俺の部屋に来るということを伝えた。さっきのこともあり少し気まずかったが大丈夫と返答を返してくれほっと一安心した。最後に気をつけろよと念を押されどこまで心配性なんだと笑いそうになったが素直に受けとめておくことにする。
それから俺の部屋に着いた後なぜだか咲野先輩がソワソワして落ち着かない様子だった。自分の部屋じゃないから落ち着かないのかと気にしないでいたらちょんちょんと袖を摘まれ「ねえ」と声をかけられる。
「吏玖先輩って、呼んで欲しいなー、なんて…」
「え?」
「だってさ!僕と蒼空でごっちゃになるじゃん?吏玖先輩の方がわかりやすいかなって?そ、それだけの理由なんだけど…だめかな?」
申し訳なさそうな顔で控えめに言う咲野先輩は少し可愛い。やっぱこういう人のことを可愛いって言うんだよ、なんてさっきの蓮の言葉を思い出してしまった。考え込んで返事するのを忘れていて、俺の反応が帰ってこなくて不安なのか袖を引っ張る手が止まらないのが可愛くて笑ってしまう。
「ふはっ…じゃあ吏玖先輩って呼ばせて貰いますね」
「っ!…ありがと!嬉しい!」
不安そうだった顔から一転、キラキラした目で見てくるのにまた笑いそうになる。でもこれってもしかして悪い方に向かってる?ちょっと判断をミスってしまったかと不安になってきた。
「奏多って呼んでもいいかな?」
「いいっすよ」
「ほんと!?え、へへ…嬉しいな」
あー、まあ大丈夫でしょ
はにかみながら喜んでる吏玖先輩は正直凄く可愛い。惚れたりはしないけどこの学園の人達がこの人に惚れる理由もわかった気がする。
「ぼ、僕ちゃん付けとかあだ名で呼ぶことばっかだからちょっと恥ずかしいな」
「じゃあ恥ずかしくなくなるまでいっぱい俺の名前呼んでくださいね」
「…あー、その発言はちょっとだめじゃない?」
「え?なんか言いました?」
「…ううん、なんでもない!2人の言ってた意味が分かっただけ!」
「??」
俺は吏玖先輩の言ってる意味わかんないけど。
てか俺しか名前で呼んでない?それってちょっとやばくないか?好き、とまではいかなくとも吏玖先輩の中で少しは存在が大きくなってしまってるかも。次からはもうちょっと慎重に考えないといけないかも?
「そろそろ夜ご飯食べに行こっか!」
「あー、食堂ですよね?」
「どうかしたの?」
今吏玖先輩と2人で食堂に行ったら多分まずい。捕まえられた時のこともあるし変な噂が立つのは避けられないとして火に油を注ぐようなことはしたくない。ついでに生徒会エリアにも行きたくない。他の生徒会メンバーに会うのも嫌だし気が気じゃない。
「俺あんま生徒会エリア行きたくなくて…」
「え、あ、なんで?」
「生徒会の人たちあんまり得意じゃないんで」
「ぼ、僕も…?」
「いや、咲野先輩は別ですよ」
「へへ、よかった」
まじでどうしようかな。手料理とか金持ちの人に食べさせるわけにもいかないし。
「じゃあデリバリーにしよっか!」
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