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編入生
「うわ、すげぇ……」
目の前の門は軽く3mはあるし門の奥はなんか薔薇とか噴水とかあんだけど。てか学校見えないんだけどここ本当に学校だよな?
色々疑問に思うことは沢山あるけど遅刻する訳にも行かないし早く中入って教室に向かわないと。
インターホンを押すと綺麗な声が聞こえた。
「はい、お名前とご要件をお伺いしてもよろしいですか?」
「今日から編入する須﨑奏多なんですけど、門開けて貰ってもいいですか?」
「はい、須崎様ですね。今門を開きますので少々お待ちください。今からそちらにリムジンが迎えに上がりますのでそちらにお乗り下さい。」
「歩いていくんで大丈夫ですよ?」
「そちらから本校舎までは徒歩で行くには2時間ほどかかるのですが……。」
「へ?」
2時間?え?冗談じゃないよな。お金持ちの感覚がわかんないから余裕もって1時間前に着いたんだけど、倍掛かるとか聞いてない。
リムジンで送り迎えとか申し訳ないけど初日から遅刻は避けたいし……。
「……すみません、お願いします…」
「ふふっ、では門が開くまで少し離れてお待ちください。」
笑われた……めっちゃ小さい声だったけどバッチリ聞こえた……。
恥ずかしさに襲われながらも言われた通りに少し離れて待っていると門が動き始めた。見た目から想像していた音とは違いウィーンとあまり音をたてずに自動で開く門に圧倒される。あとさ、確かに自動で開く門はあるけどさ……上に行くのは初めてなんだけど。
一応ぺこりとお辞儀して中に入る。転校する度に色んな部活に入ってたから運動部特有の癖が出ちゃった。
「まじすげぇ……」
門が開いて改めて中の風景に感激してると横からスっと誰かが出てきた。黒スーツにサングラス掛けてて……なんて言うかいかつい……。しかも無表情で、なんていうか怖いし。
「送迎のリムジンが到着するまでこちらでお待ちください」
「ありがとうございます」
意外と優しい門番さん?が案内してくれたベンチに腰掛けると横で後ろで腕を組み待機してる。もしかして見守ってくれてるとか?凄いかっこいいな。
「こんなに厳重な門なのに門番さんまで居るって凄いっすね」
「生徒の安全のためですから」
「かっこいいっす」
「仕事ですので」
「仕事でもかっこいいっすよ。姿勢とか、オーラ?こう、この学園を守ってるっていう感じ凄いかっこいいです」
「……ありがとうございます」
立方とかなんかビシッとしてるし威厳ある感じする。めっちゃ強そう。
この辺休憩場所とか無さそうだし水も何も持ってないみたいだけど大丈夫なのかと心配になった。
(そういや俺朝買ってまだ飲んでない水あったよな。)
「ずっと門番して大変だと思うんで、これどうぞ」
「いえ、頂く訳には……」
「貰ってください、春でも水分補給は大事ですよ?」
「では、…有難く頂きますね」
戸惑いながらも受け取ってくれた。春でも熱中症はバカにできないし、この人全身スーツで苦しそうだしマスクだってしてるから余計心配だ。
「あ、そうだ。甘いものとか大丈夫っすか?」
「はい」
「じゃあこのチョコもどうぞ」
「…ありがとうございます」
「熱中症に気をつけて、お仕事頑張って下さい」
俺がそう言うと一瞬目元が柔らかくなり印象がガラッと変わった。さっきまでは厳格ってイメージだったけどダンディーって感じに。
「君も楽しい学園生活を……」
そう言うと額に柔らかい感覚とチュッと可愛らしいリップ音が聞こえた。何をされたのか一瞬分からなくてぽかんとしてると門番さんも慌て始めた。
「申し訳ございません!私の家系はこうやって見送りするのが基本でしてっ……」
「いえいえ、あの、…ありがとうございます?イケメンにキスして貰えたので今日一日はめっちゃラッキーになれそうですし」
正直初めて会った人に急にキスされるって状況は驚いたけど門番さん滅茶苦茶顔赤くしながら慌ててるし反省してるし俺から言うことは何もないかなって。
2人して謝ってたり感謝したり訳の分からない会話をしていると迎えが到着した。俺は迎えの車の方へ向かって門番の人は元の場所へ戻って行った。
今どきキスして見送りとかあるんだって思ったけど見た目ハーフだったし海外はキスが挨拶がわりって言うもんな……。それにしても門番の人くっそイケメンだったな……。
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