日常

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俺は今生徒会室の目の前にいる。なぜここにいるかと言うと、吏玖先輩が俺の部屋に置いていったハンカチを届けるためだ。あまり生徒会メンバーと接触したくない俺からすると他の生徒、親衛隊の子とかに渡してもらう手も考えたがそこから変な噂が立っても困る。早く渡して早く帰るのが一番の策だ。 意を決して扉をノックする。 「失礼します、1年S組の須崎です。咲野吏玖先輩居らっしゃいますか?」 「今は居ませんが……中に入ってお待ちください」 「え、いや居ないなら」 「お入りください」 「は、はい……」 出たのは副会長だった。吏玖先輩が居ないなら帰らせていただきたいのだが副会長の有無を言わせない笑顔にお邪魔するしか無かった。中に通され高そうなソファに座るだけでも無駄に緊張して落ち着かない。お茶を用意してくれたがこんなもの要らないし正直早く帰りたい。そう思っていると追い打ちをかけるようにまた嫌な人物をお目にかける。 「誰かと思えばお前か」 「お久しぶりです」 現れたのは会長。いつも通り俺様の偉そうな顔をしていて絶対に関わりたくない。 「陽向に色目使うなよ、少し顔がいいだけだ俺様の方が勝ってるんだからな」 「分かってます」 「ふんっ…相変わらず面白みのないやつだ」 どうもありがとうございます、俺からしたらただの褒め言葉っすよそれ。 「吏玖が言っていたのはあいつか」 「知り合いですか?」 「少しな…しかし吏玖はあんな面白みのないやつのどこを気に入ったんだか」 「吏玖ってああ言った見た目の方を組み解くのが好きじゃないですか」 「だが初めての名前呼びだぞ?今までの相手とは違うだろう」 「確かにそうですね……今のところ行動も普通ですし、どこに惹かれたか気になりますね」 なんなんださっきから。後ろでコソコソと。言いたいことがあるなら言いに来てくれ、いややっぱ来ないでくれ。 とにかく怖い、早く吏玖先輩来てくれ 俺の願いが通じたのか扉が開き俺が会いたかった人の姿が見えた。会長と副会長から逃れるように急いで側へ駆け寄る。 「吏玖先輩!」 「え?奏多?」 「遅いっすよ、俺めっちゃ心細かったのに…あれ?どうしたんすか?」 いきなり黙り込んだ吏玖先輩が心配で見つめていると吏玖先輩の目が揺らいだ。 「…なんで僕だって分かったの?」 「へ?どゆことっすか?」 「蒼空だとは思わなかったの?」 「え?あ……いや、あれれ〜、どっちですかね〜?」 「誤魔化さないで、教えて」 確かに吏玖先輩の隣には弟の方もいる。しかも弟の方も俺をびっくりした目で見つめてきている。ちなみに後ろからも視線を感じる。見るな、誰も俺の事見るな。 この状況ではもう言い逃れできそうにない、素直に言うしかない。 「俺もわかんないけど、ずっと吏玖先輩と一緒にいたからかな…なんか、分かるように、なったみたいです……あはは」 今の俺は上手く笑えているのか不安だ。多分少しぎこちない笑みを浮かべている。だってこれはまずい、まずすぎる。風舞姫風に言うと多分これは双子兄ルートやつだろう。男に好かれるだけでも貞操の危機を感じて怖いのにそれが生徒会メンバーとなれば余計怖い。 「ほう、お前意外とやるな」 「凄いですね、長年一緒にいる私達でも見分けがつかないのに」 「僕たちのこと見分けれるのなんてひなちゃんだけだと思ってたよ〜!」 「見分け方教えて欲しいよ〜」 やばい、これまじで嫌な予感しかしない。 「あ、はは…これハンカチ忘れてったヤツ届けに来ただけなんで!俺帰りますね」 そう言ってそそくさと帰ろうとするとギュッと手首を掴まれた。その手の力が強くて痛くて顔をしかめると次には壁に押されて壁ドンなるものをされていた。吏玖先輩の後ろで他の生徒会メンバーが隣の部屋へ移ろうとしてるのが見え咄嗟に引き止める。 「ちょっ、ま、待ってください」 「へ?あれれ〜もしかして引き止められちゃった〜?」 もう会計でも副会長でも会長でも誰でもいいからそばにいてくれ。今吏玖先輩と2人きりになったらまずい予感しかしない。もう学んだ、何回も学んだ。 「助け求められるのは嬉しいけど今回はごめんね〜?」 薄情者……あんたがピンチになってても絶対助けてやんねえから
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