日常

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風紀委員長のお腹が大きな音を鳴らしたのをきっかけにみんな食の方へと意識が向く。そりゃそうだ、俺が来てからもずっと何も食べず仕事に没頭していたから。 勝手に頼むなんて迷惑になったらどうしようかとも思ったが思ったよりみんな喜んでくれて安心する。デリバリーが出来るという情報を知っていて助かった。 「美味しいっ、美味しいですっ……!幸せですっ!」 「泣くほどっすか?」 「だって最近皆ピリピリしてて、人にこんな優しくされたの久々でっ」 「あー、お疲れ様です…」 泣きながらご飯を食べる人なんかもいて可哀想すぎてこっちまで泣けそうなほど。背中をさすりながら水を渡すと神様!と崇められてしまった。俺そんな立派な人じゃないんだけどなあ。 「須崎君ですよね!!」 「え?あ、はい」 急に誰か知らない人に手を握られキラキラした笑顔を向けられ引いてしまった。距離を取ろうと後ろへ下がるもより顔を近づけられより距離を縮められる。てかこの人めちゃくちゃイケメンだ。 「風紀委員入ってもらえない?!」 「はい?」 突然のことに俺はもちろんこの場にいる全員がフリーズする。さっきまで和気あいあいと話していた人たちも全員こちらに注目が集まっているようで視線を感じる。しかもただの視線じゃなくて期待がこもってる、みたいな感じのやつ。 「なにしてるんだ、玉置」 「だってこの子逸材すぎません?ここで逃したらだめだと思って」 「いや、俺役員とかそういうのは…ちょっと」 あんまり目立ちたくないし…風紀委員とか面倒くさそうだしあとできる限り顔の良い人たちとは関わりたくない。 「こういってる事だし諦めろ」 「でも先輩だって楽だったでしょ?!」 「いや、それは…」 「奏多くんがいたら今のしんどい時期にストレスでノイローゼになる人も減りますよ?」 明るいイケメンの人がまくし立てるように委員長を説得し始めると委員長も押され始める。それを見計らったかなんなのか他の役員たちまで加勢し始めた。 「これ以上ノイローゼで人員が減ったら終わりですよ?!」 「ご飯も食べないで徹夜三昧の日々はもう懲り懲りです!」 「今月はなんの行事もないからまだやれてますが来月は七夕祭もあるんですよ?!」 「絶対誰かぶっ倒れますよ!!」 「……だめだ」 少し溜めたあとはっきりと断った委員長に俺は少し安心した。申し訳ないとは思うが俺も自分の身が可愛いわけで、今日あんなことがあった手前もう油断する訳にも行かない。なんて思っていたら役員さんたちは委員長を説得するのを諦め俺に矛先を向けた。お願いしますと泣きながら崩れていく役員さんを押し退け俺の前に風紀委員長がやってくる。何も無かったような顔をしてるが気にならないわけが無い。 「気にしないでくれ」 「いや、でも……」 「本当に大丈夫だ」 風紀委員長がそう言うものの後ろからチラチラと覗かせてくる顔が切なげである。お願いとまるで捨てられたワンコのような顔をされてしまっては断りずらいにも程がある。 「あー、もう!分かりましたよ!」 「いや、そんな…申し訳ない」 「俺も今日助けてもらいましたし!」 俺は風紀委員長に大きな恩がある。あそこでもし助けてもらわなければ大事なものがなくなっていたかもしれないんだ。それの恩を返すとなればまだまだ何も返せてないんだし委員会に入って少しでも助けになるならそれもいいか。なんて思っていると風紀委員長から提案を持ってきた。 「じゃあせめて、期間限定というのはどうだろう」 「それなら快く承諾しますよ」 「本当に申し訳ない」 申し訳なさそうにしてる風紀委員長を押し退けさっきの関西弁の人がやってくる。 「ほな須崎君風紀委員入ってくれるん?」 「言っちゃったんで入りますよ」 キラキラとした目を向けられ今更断れる訳もなく入るとしっかりと宣言する。そういった瞬間また手を握られブンブンと振られる。 「「「「「「「「「やったああーーー!!!!」」」」」」」」」
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