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1. あたしが小説のヒロイン?
いじめか?
高校のクラスの柄の悪い男子数人に一人が取り囲まれているのを見たとき、直観的にそう思った。
たぶんふつうの女子高生なら、ここは見ないふりをしてスクールバックをしっかりと脇につけ、そそくさと立ち去るのだろう。
それが不正解とは思わない。
生物学的にも、男女の力の差は歴然としているんだから、危険を感じたら逃げるべきだ。
ただ。
あたし、勝美詩夏乃の心臓にたてかけられている鉄のボードの存在がある。
そこに書かれている、不正は見過ごさないというマイルールにひっかかってしまったのだから致しかたない。
茂みを挟んだ内側で立ち止まり、しばし思案する。
弱ったな。
さすがにとがってる系男子計三人相手はためらう。
「九龍。お前さ、なんでいつも一人でいんの?」
「一匹狼気取ってる口?」
三人からあざけるような嘲笑を浴びせられているのは――九龍大河。
教室ではいつも一人でいる男子だ。
話したことは数回、しかも挨拶程度しかないが、いつもどこかけだるげというか、厭世的な雰囲気を漂わせている。
藍色の髪に、案外大きめな瞳。
クラスの女子の中では、クールでかっこいい、という子もいるらしいけれど。
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