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1:二人の転入生
今朝は、妙な夢を見ちゃったなーって思ったけど、今はもうその夢の内容についてはすっかり忘れてしまっている。ただいつも見ている夢とは違う感じの夢だったってことは覚えているけどね。まぁ夢って意識しないとすぐに忘れちゃうことあるしね。
ま、今はそんなことよりも!それとは別に自分の身体にすごい変化があったのよ。ずっと悩んでいたことがやっとやっと解消されて、私はちょっと、いやかなりご機嫌だったのだ。
放課後、友人と帰宅中、どうもそんな様子が駄々洩れだったようで…
「ねぇねぇ、茅乃(かやの)なんかご機嫌じゃない?!何かいいことでもあったの?」
友人の美憂(みゆう)に呼ばれた私は振り返った。
「ふふ、わかる?」
「えーなになに?」
「えへへ、内緒!」
「なによ!つまんないわねー教えてくれたっていいじゃない!」
美優はほっぺたを膨らませていた。
「んー、まぁ追々ね。」
私はうれしいことではあったけど、事の内容から、今は言う気になれなくて、はぐらかしたのだ。ごめんね、美憂。
「もーまぁいいわ。それよりもさ、聞いた?」
ん?気のせいか美憂の目がキラキラしてる?
「聞いた?だけじゃわからないよ。何を?」
「もう~~ほんと察するのが苦手なんだから~~」
あれ?コレって私が悪いの?頭の上に?マークが出た気がした。
「転入生よ、私達の学年に転入生がくるんだって!」
「へぇそうなの?知らなかったわ。珍しいのね、こんな中途半端な時期に。」
「私は見てないんだけどさ、なんでも見た子がいうには、すんっごいイケメンなんだって!それだけでも凄いのに、もう一人はすごい美人らしいのよ!」
「へぇ~そうなんだ。って二人もいるんだね。」
「もうーなによ、その気のない返事は!気にならないの?」
「まぁ時期が中途半端だし早くクラスに馴染めるといいね、くらいは思うけど?」
「…あんたにこんな話を振った私がバカだったわ。」
あれ?なぜか私が呆れられてる?
「茅乃もオチオチしてらんないわよ!」
「なんで?」
「あんたの親衛隊の人たちがこぞっと転入生に靡いちゃうかもよ~」
美憂はニヤニヤしながらそんな事を言ったけど、
「あぁ、別にいいんじゃない?」
「…うん、やっぱり言った私がバカだったわ。」
あ、また呆れられてる。
親衛隊…アイドルじゃあるまいし、と思うのだけど確かに私には親衛隊がいる。
我ながら恥かしいので『親衛隊』と名乗る人達に会うたびにやめてと言っていたのだけど、「「「邪魔はしません!」」」と何度言っても聞き入れてもらえず、もう放置している。といってもそれを公認したと勘違いされてしまったのは後程知ったけど。
私は如月茅乃(きさらぎかやの)。いわゆる、美人というよりは儚げな清楚系の可愛い部類に入るらしい。(自分ではそんなこと思わないのだけど、他人が言うにはそう見えているらしい)昔から、容姿についての評価がいいのは知っている。だって告られたのも、一度や二度じゃないからね。こんなことを自分で自覚しているくらいなので、中身は儚げではないと察し。
モテるって言えば聞こえはいいけど、それはそれでいろいろとシガラミもあって面倒なこともあったりするのよ。
何とも思っていない男子からのアプローチがあり、それに対して面識のない女子からの調子にのらないで!っと言われる理不尽さ。
あと無理やり連れてかれそうになったり、付きまとわれたりもあったりで、異性が絡んだ時は大抵碌な目にあったことが今までないので、極力自分からは関わらないようにしている。
そんな経験ばっかりだったせいか、恋愛に関して少し冷めているのかもしれない。
昔、交際に発展しそうな人はいたんだけどね。中学の時だった。
ちょっといいなって思う人がいた。気になっている人、松岡凛(まつおかりん)くん。
スポーツ万能で成績もよくて、さわやか系のイケメンだった。同じクラスだったから、よく話すようになっていたし、私も悪くない感触かもって思っていた。その時は。
ある日の昼休みに、昼食のパンを買いに行こうと売店に向かっている途中で、松岡くんが友達と一緒にいるのを見かけた。教室以外で偶然会えたことに嬉しくて、声をかけようかと思ったのだけど、私の名前が一瞬聞こえたので、思わずとっさに隠れて聞き耳を立ててしまった。
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