The remaining prologue

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 ハルの願いとグアルドルムの呪い。それらがなんか競合して、今私は猫としてハルの側にいる。ハルが2歳の頃に拾われたから、今世の年齢はおそらくハルのほうが高い。まぁ私には前世の記憶があるし、猫の人間換算年齢みたいなやつじゃ私の方が……あれ?  ハルは今16歳。前世での享年と同じ年齢まで、今生は家の使命なんかもなくってすくすくと育った。来た時を0歳としても、14歳。猫の寿命とか人間換算とかはわからない(猫にインターネットはできない!)けれど……結構高齢なのでは!? 「今更気づいたのか、たわけめ」  自分の顔で察したのか、目の前の黒猫がそう嘯くので、自分はたまらずシャーッと威嚇した。  平日、親が仕事に、ハルが学校に行った後、自分もそろりと窓から外に出て、近所の猫付き合いや散歩をするのが今のマイライフだ。猫を飼ってる側からは悲鳴があがるかもしれないが、私はこうもしてないとやっていられないのだ。 「お前もおんなじでしょうが」 「特に吾は執着とかないし……」  そう、この猫こそグアルドルム。前世で不退転の決意をもって命にかえても復讐を成した不倶戴天の敵は、当初壮絶な、それはそれは壮絶な猫パンチの応酬をしたものだが、今や唯一同じ境遇の者として、まぁ、通じないところがないわけでもない。 「して、貴様の妹のことだが……おっと、もうこんな時間か。留守番ご褒美のちゅるるに間に合わなくなる。さらばだ」 「ちょっと今聞き捨てならないこと……ちょっとー!?」  実際日は傾き始めている。季節・曜日的には実際そろそろ帰らないと、ハルを出迎えるのは私の仕事だ。グアルドルムは決して油断してはいけないが、4:6くらいで嘘と本当が混ざっている。今回はこっちであってくれ〜と願うと大抵外れるので、今回はあえてマジの話であることを願ってみる。歩くのが異常に早いグアルドルムを追いかけるのは無理なので、私は大人しくその場を後にした。
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