今、話したい誰かがいる

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今、話したい誰かがいる

 誰よりも先に出勤し、部下達が分担してくれた書類に目を通していった。  朝礼を終え、各々(おのおの)が確認作業をしてから恒例の呑み会に出かけた。その間に引き継ぎ業務の補足修正をして課長のパソコンに送信する。課長が振ってきそうな滞っている本部からの依頼も仕上げておいた。  とにかく『推しごと』の障害となりそうな要素は、すべて片付けておきたかった。それくらい。  皆が呑み会から戻り、後は談笑して定時を迎えるだけとなった所で、部下達にアイドルの事を聞いてみた。どうしたんですかと驚かれたが、それぞれに口にするアイドルの名は、全て巨大アイドルグループのメンバーだった。ファンと言うよりテレビなどで見知っているという感じだ。  俺はうんうんと聞きながら、満を持してあのアイドルグループの事を聞いてみた。巨大アイドルグループの公式ライバルとして誕生したグループの存在は知っていても、その名前やメンバーを知っている者はいなかった。 「そう言えば、紅白に出てましたね」 「そう! それで知ったんだけどさ」  とうとう内にあったものが溢れてしまった。自分が1週間そこらで知った事を熱弁してしまった。アイドルに詳しい訳でもなく、世間一般としてアイドルを知っている部下達は、俺の突然の熱量に圧倒されながらも笑って聞いてくれた。
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