秘密

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 上体を起こし、夏目さんと向かい合ったまま、少しずつTシャツを捲り上げていく。    頭から服を抜き終えても、夏目さんは黙ってその様子を見ているだけ。  震える手でブラジャーのホックを外し、床に落とすと、夏目さんの方が大きなため息を漏らした。  「想像通り…凛がコンプレックスに感じるところなんて、何一つない。綺麗だ」  遠慮がちに触れようとする夏目さんを、声を絞って止める。    「夏目さん、ごめんなさい」  「謝ることなんて何もない」  「そうじゃないんです。私、嘘吐いてました」  「嘘?」  「確かに胸も小さいんですけど…私の本当のコンプレックスは…」  ゆっくりと体を180度回転させる。  「背中(こっち)なんです」  夏目さんの顔は見えない。  だけど、はっきりと息を呑む音が聞こえた。  当然のリアクションだ。  これでいい。  向き直って手早くブラとTシャツを身につけ直す。  「…凛が、何で…」  余程ショッキングだったのだろう。  夏目さんは青ざめた表情で、すっかり動転してしまっている。  全部分かっていたとはいえ、目の当たりにすると、さすがに胸が痛い。  だけど、夏目さんの前で泣くわけにはいかない。  夏目さんは優しいから、同情されてしまう。  そんなのは、嫌。  「私のことは、忘れてください!」  上着を掴んで、部屋を飛び出した。
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