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不審者を警戒していたはずなのに。
おまけに凛の部屋も空き巣に入られたように荒らされていたのに。
自分の馬鹿さ加減がつくづく嫌になる。
後部座席にはスモークが貼ってあって、中の様子は全く分からない。
「凛っ!!」
必死で追いかけても、人間の足で猛スピードの車に追いつけるはずもなく。
凛を乗せた車はすぐに見えなくなってしまった。
すぐに警察に通報、と思ってスーツの胸ポケットを探そうとするが、スマホがない。
大慌てでアパートを飛び出したのでスーツ自体置いてきてしまったらしい。
そこでハタと己の姿に気が付く。
シャツの胸元はだけまくり。
スラックスのホックは留まっているが、チャック全開。
おまけに、いろんな興奮のせいで下半身が超臨戦態勢のまま。
こんな状態で警察呼んだら、俺が捕まる。
ちょっと頭が冷静さを取り戻してきた。
…あれ?
もしかして、俺の方が不審者と思われた??
黒塗りセダン、俺から凛を守った?
それに、凛を連れ去った車は、最上級クラスの黒塗りセダンだった。
少なくとも身代金目的ではなさそうだ。
それに、凛が昔言っていた。
”昔誘拐されたことがあるから、知らない人の車には乗らない”
俺の推測が正しければ、凛の安全は担保されている。
つまり、凛を連れ去ったのは多分─
とりあえず胸ボタンを留め、無理やりチャックを上げると、大急ぎで凛の部屋に戻って電話をかけた。
「もしもし、兄さん?…俺だけど。大事な話があるんだ。今から実家に行くから」
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