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「そう言えば、凛、仁希と結婚するつもりはないって言ってたもんな。仁希に近づいたのは、俺とよりを戻すためだったのかもな」
言いたい放題の挑発的なセリフに、俺のこめかみの毛細血管は、すでに数本切れている。
凛が家柄を気にして俺のプロポーズを受けなかったのは、全部こいつのせいなのに。
それにしても、この男は一体凛をどうしたいのだろうか。
完璧に正体を隠して三年もの間弄び、一方的に手酷く捨てたくせに。
弟の恋人になったことを知った途端のこのこと姿を現わし、俺に別の女をあてがった挙句、今度は自分が凛と結婚─!?
考えれば考えるほど分からない。
何か大事なことを見落としているような気がするが、怒りと焦りで考えがまとまらない。
そう。
大丈夫だと分かっていても、一秒でも早く凛の無事を確かめたい。
「で。俺の結婚相手はどこの誰?」
「まだ、言わない」
あ。
やばい。
本当に太い血管が切れそう。
「勿体ぶるなよ」
「来週末が顔合わせだ。今まで20年近く我慢できたんだ。あと一週間くらい待てるだろう」
あと、一週間?
そんなの、絶対に無理だ。
これ以上は、もう我慢できない。
胸ぐらを掴んで思い切り威圧した。
「そんな悠長なこと言ってられない。凛が誘拐されたんだ」
「…誘拐?」
ずっと余裕綽々だった兄の表情が、初めて崩れた。
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