対峙(Side 仁希)

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 「いつ?どこで!?」  かつて見たことないほどに取り乱した姿を見て、やっと思い出した。  分かっていたのに、忘れていた。  そうだ。  どんなに貶めるようなことを言っても、やはり兄は本気で凛を好きだったんだ。  それなら─  「さっき。凛の家の近くで」  「お前がついていながら何で…!?」  「例の話をして、ちょっと色々あって。凛が部屋を飛び出したんだ。その直後、車に引き摺り込まれて…」  「車種は!?ナンバーは!!?」  「黒塗りのセダン。暗がりで、車種は分からなかった。ナンバーも見えないよう、細工してあった」  「警察に通報は!?」  首を横に振ると、兄が俺の胸ぐらを掴み返した。  「何でだよ!?何やってる!?」  「心当たりがあるんだ!」  「じゃあこんなところで油売ってないでさっさと助けに行けよ!」  「だから!心当たりはあるけど、それがどこか分からないからさっきから訊いてるんだよ!!」  「まさか…真壁家が凛を誘拐したって言うのか?」     俺の首を絞そうな勢いで胸ぐらを掴んでいた手から、すっと力が抜けた。
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