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俺も、予想外のビッグネームに言葉を失い、手を離した。
議員で真壁と言えば、真壁博武ただ一人。
でも─
真壁博武の子どもの話なんて、聞いたことがないが…。
こんな形で見合いをさせようとしているくらいだ。
何らかの理由で没交渉となっているのだろう。
あれこれ思案していると、兄が床に崩れ落ちた。
「何で…!こんなことにならないように、素性を隠して…、相手も決まらないうちにあんな別れ方までしたのに…!」
どうやら兄は自分の身辺整理のために凛が誘拐されたと思っているらしい。
そして、予期せぬ形で兄が凛にした仕打ちの理由を知ることになってしまった。
夏目グループの次期後継者として自由な恋愛は許されない身。
それでも惹かれ、素性を隠していたのは、凛を守るためだったのか。
もしも、兄が凛のためにとあのタイミングで別れていなければ。
もしも、最初から凛が見合いの相手だと分かっていたら。
果たして俺の出る幕はあったのだろうか?
だけど、運命は俺に味方した。
どんな理由があれ、凛だけは譲るわけにはいかない。
「…違う。そうじゃない」
「じゃあ、何で!何で真壁家が凛を誘拐したんだ!?」
自分と愛する女性の幸せを犠牲にしてまで、家族のため、会社のために努力を重ねてきた兄に、残酷な事実を告げる覚悟を決める。
「それは、凛が、真壁博武の孫娘だからだ」
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