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さすがにありえないと思い、母に助け舟を求めたけれど─
「私たちのときは駆け落ち同然だったし、凛がお腹にいたから式なんて挙げられなかったらね。娘には順番守らせたいんじゃない?ほんと、勝手よね」
と、母は呆れ気味に笑っただけだった。
*
そんな父も、今日ばかりはモーニングコートに身を包み、大理石のバージンロードを一緒に歩いてくれている。
それもこれも、夏目さんが父の気持ちを尊重して、言いつけを守ってくれたからだ。
どちらにせよ、平日は本業、土日は、次男とは言え夏目グループの御曹司の結婚式だけあって、準備で忙殺され、デートや外泊どころではなさそうだった。
両サイドにひしめく参列者席を埋めるのは、ほとんどが夏目家側の人たちだけれど、母や見事医大生になった漣、おじいちゃん、親しい友人の中に混ざって川瀬さんの姿も見えた。
私がこんな壮大な結婚式を挙げるなんて、まだ夢の中にいるようだ。
だけど、バージンロードの先には、夏目さんがこちらを真っ直ぐに見据えて立っているのが見えて思い知る。
夢じゃ、ない。
ああ、この人は、ずっと私を待ってくれていたんだ。
父の腕を離れ、”待っててくれて、ありがとう”という想いを込めて、夏目さん腕をぎゅっと掴み、二人で未来へ向かって歩き出した。
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