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事後、いつものように、夏目さんは、少し襟足の伸びた私の頸に顔を埋め、スンスンしながら尋ねた。
「凛、何かあった?」
まずい。
一哉=壱哉ということに気づかない夏目さんの鈍感さに油断していた。
いきなりフェ●なんてしたから変に思われたんだろうか?
それとも、これまで夏目さんがお相手してきたお嬢様たちには、こんなはしたないことされたことないから、引かれた?
動揺を抑え込み、努めて冷静な口調で答える。
「別に何もないですけど。どうしてですか?」
「いや…なんか、匂いが最近違うから」
いつもと様子が違う、とかではなく、まさかの匂い!
夏目さんらしいと言えば夏目さんらしいけど。
「犬じゃあるまいし。止めてください」
「本当なんだって!物悲しげって言うか、哀愁漂うと言うか。いつくらいからかな…そう、ちょうど兄貴に会わせたくらいからだ」
恐るべき、嗅覚。
そんなことまで察するとは。
「あの日、俺がいない間に兄貴に何か言われた?」
「…何も言われてませんよ」
「じゃあ、もしかして、兄貴のこと好きになった?」
「何でそうなるんですか!?それは絶対にあり得ません!」
「だって凛、前に『濃いめの顔もウザい性格も全くタイプじゃない』って言ってただろ。兄貴は俺と違って顔も薄いし、落ち着いてるし…」
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