1893人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
きつく後ろから抱きしめられ、治りかけていた熱がぶり返すように、夏目さんの体温が上がっていくのが分かる。
「凛、俺も好きだよ。…どんな凛も愛してる」
体に巻き付いていた腕の力が緩んだかと思うと、いつも通り着たままになっていたトップスの裾からそろり、と侵入して来た。
ビクッと体が強張る。
「もっと、全部愛させて」
私の反応を窺いながらゆっくりと捲られていく。
どうしよう。
このままだと本当に全部見られてしまう。
夏目さんになら大丈夫だろうか。
だけど、もし、万が一嫌われたら?
どうせそう長くは一緒にいられないのに。
わざわざ終わりを早めるようなことはしたくない。
壱哉が言っていた。
これまでの夏目さんのお相手はお金持ちのお嬢様ばかりだったと。
私みたいな女性なんて、いないはず。
そう考えたらどうしても勇気が出なくて─
気づけば夏目さんの手首を掴んで止めていた。
「あ…明日夏目さん出張でしょ?私もバイト入ってるし。早く寝ないと」
不機嫌になったりしないだろうかと不安が過ぎったけれど、夏目さんはケロリとした様子で言った。
「あー、そうだった。忘れてた。凛が初めて好きって言ってくれたのが嬉し過ぎて」
「えっ、初めてでしたっけ?」
「うん、初めて」
「こ、これからはいっぱい言いますから。とりあえず今日は寝てください」
「えーっ、生殺し…」
ホッとして、他愛のない会話を噛み締める。
『あと何回夏目さんに好きって言えるだろう』
そんなことを考えながらゆっくりと眠りに落ちて行った。
最初のコメントを投稿しよう!