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「地位や家柄で線引きしてるのは凛の方だ。俺はこんなに凛が好きだって…凛を愛してるって言ってるのに、全然伝わってない。何が悲しくて惚れた女に他の女との結婚を勧められなくちゃならない!?」
凛が好き
凛を愛してる
惚れた女
身を引くと覚悟を決めたのに、甘い言葉が薔薇の蔦のように私の心に絡みついて胸を刺す。
「だって…夏目さん、彼女があの人の婚約者って聞いた時動揺してた」
「確かに動揺はした。だけど、誓って彼女に未練は一切ない。自分でも驚いたよ。恋心は消えても恩人のはずなのに、兄貴に利用されれば凛と俺の未来にとって枷になると思ったら、疎ましいとすら感じてしまうなんて」
「嘘…」
あのときの動揺はそういう意味だったなんて。
「嘘じゃない。俺は凛しか要らない。凛と一生一緒にいたい」
例えほんとうにそうであったとしても、関係ない。
きっと夏目さんの家族も壱哉のように反対するはず。
夏目さんと一緒にはいられない。
「そんなの、無理ですよ。大体夏目さんは私なんかのどこが好きなんですか?顔は平凡だし、口も悪い。頭も良くないし……それに…っ」
私をきつく縛っていた腕が肩に移動し、少しだけ夏目さんから離された。
そして、夏目さんは私の目をまっすぐ見て言った。
「家族のために一生懸命働く姿が格好良い。思ったことをはっきり言ってくる真っ直ぐな性格も好きだ。笑うと可愛い。それに、どんなに飾り立ててる女性より、凛は綺麗だ」
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