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五ヶ月
コンピューター授業が始まって五ヶ月が経っていた
進藤優也と島田正彦は特別コンピューター授業で
メキメキとコンピューターの腕をあげていた。
島田正彦と進藤優也は二人ともタイピング試験とWordの試験を二つ同時に受けて既に合格していた。
二人は一年で二つの資格を取ることが出来た為余裕で特別コンピューター授業を受けていた。
島田正彦と進藤優也は余裕が出てくると田村孝志の事が心配でたまらなかった。
二人が心配している理由は先月からコンピューター苦手生徒教室が出来た事だった。
全く出来ない生徒の為に日頃パソコンを触った事がない人……初心者レベルの生徒を丁寧に教える初心者専用のパソコン教室の先生が学校に来て教えてくれる事になった。
本当にしっかりと丁寧に教えてくれる先生なのか?
正彦も優也も心配していた。
何故なら、だんだん口を聞かなくなった孝志は最近頬を腫らして学校に来る事が多くなったからだ。
腕を怪我して来ることもあった。
正彦や優也が聞いても「何でもない、放っておいてくれ」そう言って二人を避けていた。
正彦と優也は今日のコンピューター授業の時抜け出して孝志の「コンピューター苦手教室」を覗く計画をしていた。
今日の特別コンピューター授業の教室の生徒はほ
とんど何かしらの資格に合格をした為、今日一日は自習でいいと特別コンピューター授業の先生は生徒に話した。
「資格の勉強と特別教室の勉強で疲れたでしょう?今日はテキストを見て自習したりたまには目をつぶって目を休ませたり、自由にします。
先生も職員室に行っていますので今日のこの二時間だけは自由にしますが、トイレや水分補給以外は
この教室から出ないように。
他のクラスに迷惑になるようなお喋りはしないように。
コンピューター室での飲み食いは禁止していますので、それだけはしないように。
コンピューターは丁寧に扱うこといつも軽く掃除をする事。それだけは守ってください。
この特別室の生徒の皆さんは優秀だし、コンピューターの授業が好きになった生徒さんばかりなので
心配はしていませんが~。
ここに防犯カメラもありますからね。
煩くする事はできませんよ」飯島洋子はそう言った。
特別コンピューター授業の教室は飯島洋子が指導する事になっていた。
飯島洋子が職員室に行くのを確かめると島田正彦と進藤優也はコンピューター苦手授業教室に向かった。
所々にある防犯カメラに気を付けながら。
「正彦~後少しだ防犯カメラに気を付けろよ」
「わかってるよ優也~」
「やっと着いたなここが孝志の教室か~この教室に入ってしまった生徒は五人だったな」
「そうだな~優也あれを見ろよ!」
正彦と優也は廊下の窓からコンピューター苦手教室を覗いた。二人が見た光景は信じがたいものだった。たった五人しかいないこの教室で行われていたのはコンピューターを教える授業とは程遠い
「体罰」だった。
そして、その「体罰」を行っているのは……
正彦と優也と孝志が慕っていた一年A組の担任……
中林進だった。
教室から声が聞こえてきた。
「お前らの頭に脳みそは詰まっているのか~!
何で覚えないんだ!またさっきテストしたパソコン出来なかったよな?また今日も罰だ」
五人は中林進に思いっきり頬をピンタされていた。
そして、コンピューター授業を教える学校側が雇ったコンピューターの先生も「私もここまで覚えが悪い生徒だとは思わなかったわ~私がいつも教えているもっとお年寄りの生徒さんの方が記憶力いいわよ。もう耐えられない~私辞めます」
中林進は「それは困ります。充分なお金を渡しているんだし、校長に頼まれているんです。辞めるなんて言わないでください」
パソコンの先生は言った。
「この生徒さん達はコンピューター授業に向いてないのよ。いくら体罰をしても無駄だわ。
もう終わりにしましょう。
この五人が居なくなってもまた落ちこぼれた生徒
さんがこの教室に来ると思います。そうなるとこの教室は満杯になります。
とにかく私は、この生徒さん達を教えるのはもう無理です」
正彦と優也は廊下の窓からその話を聞いていた。
「正彦~本当の初心者レベルの人を教える事ができる先生がコンピューター苦手教室の生徒を教えて
るんだよな?それに学校の外では初心者パソコン教室の先生なんだよな?それなのに無理って?
どういう事なんだ?辞めたいって?本当にプロの先生なのか?」
優也に言われて正彦も「そうだよな~それに体罰って!やば、誰か来たみたいだ、とりあえずそこの
トイレに隠れよう」
二人は誰かが来るような気配を感じて近くの男子
トイレに逃げ込んだ。
ガラガラガラ……
「おい、コンピューター苦手教室に誰か入って行ったぞ、見に行くぞ」優也は正彦に言った。
二人はコンピューター防犯カメラに気を付けながらコンピューター苦手教室の窓に戻った。二人が見たものは衝撃的な光景だった。
「正彦あれを見ろよ」優也は正彦に言った。
二人が見たもの……それはコンピューター特別授業の教室の先生、飯島洋子だった。
飯島洋子はコンピューター苦手授業教室に入ると
こう言った。
「太田幸先生から覚えが悪い生徒ばかりで困ると聞いて今日の特別コンピューター授業の教室は自習にしたわ。
本当にここで立たせてるの?まあ、ピンタをしたようね」
正彦と優也は「先生……体罰を止めにきたのか?」
二人はそう思っていた。
ところがさっきまで正彦と優也のクラスにいた飯島洋子は中林進と太田幸にこう言った。
「ピンタだけじゃ覚えが悪いのは直らないし、
私は駄目だと思います。この生徒達とうちの特別教室の生徒と物凄く差が開いてしまっている。
ここの生徒さんは資格を一つも持っていませんよね?厳しいようですが、この教室の生徒さんはコンピューターに向いてないと思うんです。
たまに見に来ていますが上達していないように感じます。無駄な時間ですので予定通り引っ越してもらいましょう。
皆さん、この次のテストで最後です。次のコンピューター授業は一週間後てすね。
それでコンピューター試験に合格出来なかった生徒は規定通り引っ越してもらいます。
そしてもっとあなた達の頭でもわかるような先生に教えてもらいます。全く困ったものだわ」
飯島洋子はそう言ってコンピューター苦手教室の生徒一人一人を蹴っ飛ばした。
それを見ていた正彦と優也はこっそりスマホで動画を撮っていた。
正彦は言った。「これをSNSで流そう生徒達の顔だけ隠して」
優也も「そうだな~まさか裏で体罰が行われているとは思わなかった。この証拠さえあればもう体罰をすることはないだろう」
「でも、引っ越しってまさか本当に?とにかく時間がない!すぐこれをサイトで流そう」
二人は孝志の教室に行って先生にこの証拠を見せようとも思ったが、もしここで見せたとしたらきっと証拠を隠蔽されてしまうだろう」二人はそう考えると教室の中に入る事は出来なかった。
二人はとりあえず特別コンピューター授業の教室に戻って行くことにした。
正彦は優也に言った。「なあ?真にこの事を話してみないか?」
優也は「真に?」
真と言うのはコンピューター特別教室で仲良くなった友人だった。
正彦が真に相談したいと言ったのには理由があった。真の父親は弁護士だったからだ、
きっと何かあった時には助けて貰える
二人はそんな甘い考えをこの時点でもまだ持っていた。
そして、先生達が仕事のストレスからピリピリしている毎日を送っていることなどこの時まだ中学生の
二人には何もわかっていなかった。
先生が体罰をするまで追い詰められていた事も……。
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