家族

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優也は友人の正彦を送り出しても家族が誰一人帰って来ない事に不信感を抱いていた。 「全く!母さんも父さんも兄さんも姉さんもどこに行ったんだよ!夕飯の支度もしないで携帯にも何の連絡も入ってないし~出掛けるなら一言メールに入れておけばいいのに~」優也はイラついていた。 優也はその後一人でお風呂の掃除をして湯船に浸かった。お風呂から出ると電話が鳴っていた。 「母さん達だな~全くこんな時間まで」 優也は家にある固定電話に出た。 それは家でゲームや漫画を見て今日過ごしていた 正彦からの電話だった。 「優也大変だぞ!リモートIT法案これは……恐ろしい法案だぞ」 正彦はテンパった感じで優也に話した。 「正彦~何が恐ろしいんだ?落ち着いて話してくれよ」 優也は正彦にとにかく落ち着いて話すように言った 「優也~知ってるか?この法案は~俺は最後まで自分達には関係ないと思ってニュースを見なかった。優也も、もしかしたらそうじゃないのか? この法案はコンピューターを覚えようとしない者、つまりコンピューターの勉強をしない者は大事な 持ち物が搾取される法案なんだよ。 だから反対者もいるんだよ」 優也は聞いた「大事な者の持ち物が搾取って?まさか?家族?」 正彦は言った「家族じゃないよ。携帯だよ。俺の家族もまだ帰って来てないんだ家族がどこに行ったのか?連絡がないのはおかしいと思って携帯で家族に連絡を入れようとしたんだ。でも、何故か?携帯が使えないんだよ。何度もメールで家族に連絡をとろうとしたんだけど~そしたら携帯画面に出たんだよ。 お客様はどのコンピューター教室にもお申し込み されていませんね?無料教室の抽選にも参加されていませんね? 抽選で破れてもいいので参加されませんと コンピューターの勉強はやる気ないと判断しますのでまず手始めに携帯を使えないようにいたします。コンピューター勉強に参加いたしましたらその領収書を携帯会社の窓口に持ってきてくださればすぐに使えるようになります。 使えない間は携帯料金は掛かりませんのでご安心ください。 また個人情報はきちんと管理いたしますので安心してください」そう画面に出たんだよ。 「えっ?じゃあ何もコンピューターの勉強の意思を示さないと大事な物が一つずつ搾取されるって事?遊んでいる暇はないって事?」優也は正彦に聞いた 「そうだよ。優也~俺、明日学校で無料パソコン教室抽選で落ちるかも知れないけど申し込むよ。 その控えを持って携帯会社に行くよ。 保護者のサインももらうよ」 優也はそれでもまだこの法案の恐ろしさに気がついていなかった。 「正彦~そんなの国の脅しだよ。 青春は一度しかないんだよ。楽しまなくてどうす るんだよ。俺達は機械に殺されるぞ」 優也は家の固定電話で必死に正彦を説得した。 でも、正彦の口調は冷たかった。 それは今日、家で一緒に遊んでいた友人の同じ 正彦だとは優也はとても思えなかった。 正彦は優也に言った。 「優也~お前いつまで遊んでるつもりだ? 今、機械に強くなる為に勉強しておかないと、 就職してお金すら稼げない。 お金もない携帯も取り上げられる。 未来を見て楽しめなくなるんだぞ!結婚すらできなくなるぞ!どうやってこの先楽しむんだよ!優也 時代は変わったんだよ。 とにかく俺は明日パソコン無料教室に申し込むから。それにもう一度リモート法案のニュースを最後まで見た方がいいよ」 正彦はそう言って電話を切った。 その時、家族が帰って来た。 「どこに行ってたんだよ皆~」 その時、父も母も兄貴や姉も口を揃えて言った。 「お前こそ連絡にも出ないでどうしてたんだ? まさか?お前コンピューターの申し込みを1つもしていないのか?近所に無料で教えてくれるところならたくさんあるはずだ!掲示板に無料コンピューター教室生徒募集の張り紙がたくさん張ってあったはず? 携帯搾取されたのか?だから通じなくなったのか~これからどんどん搾取されるぞ!」 優也は言った「でも、何で家電に電話しなかったんだよ」 父と母は言った。 「掛けたよ。でも、掛からなかったんだよ。 私達が持っている携帯からは~最近は皆、携帯持っているからな、電話ボックスなんてあまり見かけなくなったからな。 そもそもお前が何も申し込まないから携帯から家に電話が掛けられなくなったんだよ。 お前、早く何処かに申し込まないとお前は誰とも 連絡が取れなくなるぞ!恐ろしいのはお前がいつまでも呑気だと周りの皆はコンピューターの勉強に 励んでお前とは口も聞かなくなるぞ! お前はこれから孤独になるかも知れないんだぞ 携帯で連絡すら今もとれないじゃないか?」 優也は両親のその話を聞いて急に恐ろしくなった。 「お、れ、が……こ、ど、く……友達がたくさんいる俺がこれから孤独の人生を歩かなくてはいけないのか?」 父も母も兄弟も優也に言った。 「携帯も搾取されてどんどんいろんな物を搾取されて人生楽しめるの?」 優也はこの時初めて、本当のリモートIT法案の恐ろしさ知った。 そしてこれから家族が何処に行っていたか? 何をしていたか?それを聞いた優也は自分ものんびりしている暇はない時代が来たと実感した。
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