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リモートIT法案
2050年国は世界に比べコンピューター推進が遅れていることに懸念を示していた。
そこで国は三歳の頃から幼稚園や保育園でパソコンを習わせる為、日本にある全ての幼稚園 保育園にパソコンを導入させ、幼児教育の一環にコンピューター授業を取り入れる事にした。
それは幼い子供だけに止まらなかった。
小学生 中学生 高校生 大学生にもコンピューター授業は普通の学業の他に特別教室があった。
それは、コンピューター基礎から始まって、
早打ち「ブラインドタッチ」それができるようになるとパソコンの資格を強制的に取らされるというものだった。
パソコンの資格はどんな資格でも自由に自分で選ぶ事が出来るが落ちると何時間でも学校に残されて勉強させられるというのだ。
この資格があるかないかで就職ができるか?できないか?が決まってしまう。
また小学校時代にある程度コンピューターに強く
なっていないと中学では落ちこぼれになってしまうということらしい。
大学を卒業して就職する時もコンピューターの試験が導入された。
それに落ちると就職ができない為、学生は学業と
パソコン教室とで二足のわらじに加えて他にバイトも余儀なくしなければならなくなった。
それは普通の会社員でも同じ事だった。
コンピューター試験が導入され、
それに落ちると早期退職するかコンピューター試験の為の勉強をしてもう一度試験を受けるか?
その二択から選ばなければならなくなる。
また会社の試験の再試験は一回しかなかった。
つまりクビになるのだ。
定年退職した会社員も他の会社に就職する時
資格がなければどこの会社にも入社できなかった。
国は資格獲得の為に資格を受ける費用やコンピューター教室の費用は全て国が申請をすれば出してくれた。
その申請手続きが意外と複雑で時間がかかった。
役所は、申請手続きで毎日人がごった返していた。この法案で日本国民はコンピューターが得意か?
得意じゃないか?で給料に大きく差がつく事になる。そして、まだ幼い子供達さえ遊ぶ事を忘れてしまう事になっていく。
まだ中学生だった僕はこの法案の本当の怖さを
何も知らなかった。
テレビから聞こえてくるニュースを見ていた僕は
コンピューター授業が増えていいなーくらいにしか考えていなかった。
「2050年リモートIT法案略してリモート法案が可決いたしました。リモート法案です。総理から一言」
「はい、そうですねーやっと可決されました。
コンピューターを日本でもっとできる人が増えれば
会社に行かなくても家で仕事ができますですから
国はその為の費用を惜しみません。経済発展の為に力を注いで活気がある日本にしたいと思います」
「三歳からのコンピューター授業は早いのでは?」
「今は子供向けのおもちゃのパソコンがありますからねそれから指をならしていって三歳の子供達はまず、早打ちから教えるように各保育園や幼稚園に通達します」
「私は反対です総理~子供達は元気に外で遊ぶのが一番です」
「総理こんな法案、本当に国民の為になるとお考えですか!差別に繋がりますよ」
「私も反対です。日本国は格差社会になってしまう。こんな法案は作るべきではない!」
「今こそ日本を変えるべきです!」
「中林総理ありがとうございました」
「パチン」
僕はこの法案のニュースをろくに見ないでテレビを消して学校に向かった。
「行ってきます。また部活で遅くなるから」
母は言った。「そうねー部活で身体を動かせるのも今日で最後かも知れないわよね?頑張ってしっかりやって来なさい」
僕は母親が言ったその一言の意味がわからなかった。
この時から僕達学生も子供達もそして大人もこの法案によって人生が狂ってしまう事になっていく。
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