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参拝客
神社の石段を軽快に登ってくる足音が今日も聞こえてきた。
黒い雨傘を足元に置き、ぴょこぴょことツインテールを揺らしながら二礼。
大きな音を響かせてゆっくりと二拍手。そして深々と一礼。
そして再び顔の前で両手のひらを合わせ、目をギュッと閉じた少女は周りをはばかることなく声に出して願い事を言った。
「マナトくんと友達になれますように!」
そうしてペコリと一礼した後、傘を拾うと、スカートの裾を翻して石段を駆け下りていく。
「ヤレヤレ。スッキリした顔をしおってからに……」
最年長の秋雨は呆れたように言い捨てた。
「参拝して気持ちをスッキリさせて帰ってくれるなら本望じゃん?」
若い春時雨は後ろ姿を見送りながらクスッと笑う。
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