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変な事、思い出しちゃった…。
キーボードの上で止まった指先を見つめ、ため息を一つ吐いた。
何やってたっけ…と視線を画面に戻しても、心のざわつきが邪魔をして考えられない。
あーー、ダメだ…。
強張りを解くように手を手をこすり合わせ、再度息を吐いた口元を覆った。
「一生一緒にいたいと思える奴って、どんなのよ…」
誰もいない部屋に、ポツリと響いたそれ。
もういいよ…、終わったんだから…。
アイツにとって、私は結婚したいと思える女に値しなかった。ただそれだけ。
何度も理屈で納得しようとしたけど、しつこく思い出してしまう、この気持ち。
私が納得しようがしまいが結果は変えられないし、過去も未来も変わらない。
だけど…、それならもっと感情的になればよかったのかな…。
怒ればよかった?泣けばよかった?
今更思っても、同じなんだけどさ…。
悲しさなのか…、悔しさなのか…。
いずれにしても、1年も前のことをまだ引きずっている自分に嫌気がさして、頭を抱えるようにデスクに突っ伏した。
と。
――――ガチャリ。
突然聞こえた音に思わず顔を上げると、ドアの前には夏目君が立っていた。
ふわり、爽やかに微笑む顔がどんより漂っていた空気を壊す。
『お疲れ様です。山内さん、まだ残業ですか?』
「……うん。夏目君も今帰って来たの?直帰じゃなかったんだ」
『ええ、来週の資料だけ用意しておきたくて…』
彼はそう言って共用デスクに座ると、パソコンを立ち上げた。
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