30 深みに嵌る

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目の前の彼は、初めこそ、『痛くない?大丈夫?』なんて心配そうに聞いてくれていたのに、痛みがないことを確認すると、私がどんなに「できないです、無理みたいなんですけど…」とお伺いを立てても許してくれない。 お馴染みの爽やか〜な顔をして、懇切丁寧な手取り足取りのレッスンで容赦なく追い込んでくれるんだから…。 そもそも、大丈夫なわけないよね?? 教えられた通りになんかできないよ…。 こんなの言われたように動いたら、頭も身体もどうかなってしまうと思う。 頑張る、と口にしたものの、もう後悔の嵐。 なんであんなこと言っちゃったの?私?? いや、あれは無意識だった。 なるほど魔力か…。まさかのこっちも魔法の使い手だったなんて…。油断した…。 もうこれは、なんとか誤魔化してこの状況から逃げるのが一番………、 『莉乃さん、まーだ?』 「も…もうちょっと…」 あ、まずい…。 よからぬことを企んでいたのがバレちゃった??
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