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『俺しか見えなくなった?』
「そんなの…最初から…」
『よく言う…。けど、いいよ。よそ見するたびに、こうして何度でも俺のものになってもらうから。覚悟しといて?』
言っている事はずいぶんなのに。
熱い吐息を吐いて、見たことがないくらい優しく笑うから、涙が出そうになった―――…。
「………機嫌、直った?」
『最初から怒ってないって』
「………安心した?」
『………ちょっとだけ?』
「佑真…」
『……ん?』
「大好き」
言葉にすると、なんてありふれた響きなんだろう…。
だけど、伝える言葉はこれしかなかった。
私の愛の告白に、彼は何も言わずに微笑んでいるだけで。
代わりに、甘やかなキスが、ちゅっ…と音を立てて、唇に落とされた―――…。
《30章 深みに嵌る》
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