涙すらも

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 そうだ、遠くに行こう。  言葉にしがたい強烈な目的意識。休日の朝七時、珈琲を淹れていると、僕はふとそんな天啓を受けた。  今だ。今から行こう。場所はどこだっていい。とにかく遠くの地に行かなければ。砂糖とミルクをたっぷり加えた珈琲を飲み干し、僕は車の鍵を手に取った。  お気に入りの音楽を流しながら、海の方へ僕は進み続けた。道路のままに車を走らせ、潮風を求めてハンドルを切った。  本能、直感、それを示す言葉はよく分からないが、時々僕はその瞬間にそうすべきことが分かるのだ。大抵その導きに従うようにしているし、それが外れたことは今のところない。  気の向くまま海沿いを走っていた時だった。名も知らぬ丘を目にした僕は、そこから見る景色はさぞ綺麗だろうと考え、そこまで上ってみることにした。  どうやらそこは隠れた観光スポットのようだ。駐車スペースに車を停め、僕は坂道を歩いた。春になったばかりだというのに、日差しは砂糖をカラメルに変えてしまいそうだった。  この調子だと、今年の夏は一層暑くなりそうだ。すぐに汗が流れ出し、白いシャツと背中を一体化させる。
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