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突如として君がこちらを振り向く。まさか――。何かの奇跡に一瞬期待するものの、視線が合わない。やはり見えてはいないらしい。それでも、何かを感じ取ってくれたようだ。
恐る恐る、君は僕の名を口にする。
ああ……。
切なさがぎゅっと胸を締め付ける。ずっと聞きたかった彼女の声。あの時、少しでも君に弱音を吐ける強さが僕にあったなら、何かが変わっていたのだろうか。
でも、もう取り返しがつかないんだ。
透明人間になった僕は、君の声に応えられない。
死者はただ口をつぐむのみ。
だから、伝えたい全部は、この数秒に託すんだ。
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