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それは僕の人生で最も幸せな時だった。
胸に流れる甘美な安らぎで、この身に刺さる棘の痛みが和らいだ。身体中に気力が満ちていくのが分かった。
世界は剣呑だが美しい。幸せに満ちた心は、その痛みを忘れて楚然たる感情のみを抽出することができた。希望を宿した両目は、世界のさらなる美しさを見つけ出すことができた。
再び訪れたその花畑は、以前よりも華やいで見えた。理由は決まっている。彼女とふたりで訪れたからだ。自分の大切な場所を、大切な人と共有できることが嬉しかった。
興味深そうに丸い花を見つめる彼女に解説する。
これは風船花だよ。袋状の花弁には種が入っていて、代謝で生まれるガスを蓄えていつかは飛んでいくんだ。
さも詳しいですという風に言葉を連ねるが、すべてあの少年の受け売りだ。今だけは大目に見てほしい。彼女の前なんだ、ちょっとは格好つけさせておくれ。
やがて花たちは気まぐれに浮上する。
幻想的な風景が水色の空に広がる。
彼女は目をぱっちりさせてその先を追っていた。その新鮮な反応が愛おしい。草木を慈しむ彼女は、この儚い風船花に何を思うのだろうか。
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