涙すらも

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 ふと、花の香りが濃くなった。  ちらりと目を向けると、あの少年が立っていた。  何も言わず、僕は優しく微笑んだ。  彼もまた、にっこりと笑みを浮かべて消えた。  世界は絶えず動き続けている。  振れる彼女の黒髪が、風を表現している。  微笑む彼女の横顔が、(さち)を体現している。  今でも彼女の死を否定したことが、正しかったのか分からない。  命に価値を求めるなど馬鹿馬鹿しい。  それでも、この風景を目に出来るのなら、生きる価値はあるのではないか。  そんな説教くさいことを言うのはごめんだから、ただこの奇跡を君にあげよう。    何度でもここに来よう。  どれだけ君につらいことがあっても、僕がずっと側にいる。  僕らがおじいさんとおばあさんになっても、一緒に彼らの旅立ちを見よう。  でも、口に出してしまうと安っぽくなりそうで。  その誓いを胸にしまい、ただこの言葉を口にした。  ずっとずっと、幸せでいよう。  そう約束し、僕らはこれからの未来に思いを馳せた。
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