第一章

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今日は入学式前日で学園に行く予定だ 外に出ると既に俺達を送る用の車が止まっていた というか、兄さんの姿が見当たらないんだけど そう思っていると俺の視線の先から少し焦った様子の兄さんが走って来た、と思ったが最後、あとほんの少しのところで躓き転んでしまった 「ッてて…」 「兄さん、大丈夫ですか?」 そんな状況を見かねた俺は流石に声を掛けた 「うん、大丈夫」 まぁ特に目立ったところに外傷は無いし大丈夫かな 「じゃあ車に乗りましょうか」 「そうだね」 俺は兄さんに車に乗るよう促した てっきり助手席と後部座席で別れると思っていたのだが、兄さんが先に後部座席に乗り、隣の席をポンポンと叩き来いと言わんばかりに待っていた まぁ乗るけど ちなみに、分かってると思うけど今乗っている車は高級車だ 高級車など初めてだから少し楽しみだった、けど鈍感な俺には普通の車との違いがあまり分からなかった そんなくだらない事を思っていると急に兄さんが話しかけてきた 「架は学園に行くの緊張してる?」 「まぁ少しは」 兄さんが少し不安そうな顔で続ける 「そうだよね、じゃあなんか嫌だな…とかは無い?」 「あぁ、特に無いですよ むしろワクワクしてます」 なんでこんな事を聞かれたかイマイチ分かっていないが、ワクワクしてるのは本心だし、そりゃ前までは嫌だったけど?なんか時が進むごとに楽しみになってきた感じがする 若干強ばっていた顔の兄さんがホッと顔を緩めて言う 「本当!良かった~」 「良かった、ですか?」 「だって、強制的にこの学園に決められていたから、この先ずっと嫌な思いをさせるんじゃないかと心配で」 なんだそんな事か、優しい人だな。 顔も良くて優しいとか絶対モテるじゃん、いいな… あ、だから生徒会長なれてんのか 俺の中で勝手にあった謎が勝手に解けた ───── 「もうすぐ着くから準備しておいてね」 「わかりました」 時が経つのは早いみたいでもうすぐ着くらしい 約2時間程揺れていた車内は大きな門を前に止まった 俺は車から降りて早々大声をあげてしまった 「いや、でっか!!」 洒落にならないほど大きい門、シンデレラ城くらいあるんじゃないかと思う程大きい校舎、少し離れた所にあるマンションのような寮、施設全てを囲んでいる大きな壁 それらを前にし俺は大声を出さずにはいられなかった そんな俺を横目に兄さんは続けた 「最初はビックリするよね。山奥にこんな大きい施設があるなんて、僕も最初見た時は驚き過ぎて声も出なかったよ~」 懐かしそうに語る兄さんはどこか楽しげだった 「それじゃあ、今から僕がこの学園を案内をしてあげよう!」 「え!今からですか?!」 明日に備えて少し休みたいと思っていたところだった為しょぼんと肩を落としていると微笑みながら兄さんが話しかけてきた 「明日のホームルームでも学園の案内があるだろうけど、僕はその詳細を大まかに教えるだけだけで長くならないから大丈夫だよ」 そう言いくるめられて大きい学園の門を跨いだ 跨いだ先を見渡すと左右に別れる綺麗に整備された道がある 右の道の先にはマンションのような寮があり、左の道は校舎に続いていた それに呆気にとられていた俺は前から歩いてくる人の気配に気づかなかった それに対し気配に気づいていた兄はその人物に不思議そうに話し掛ける 「九条先生、今日は学園には誰も居ないはずじゃ?」 「おぉ朔間か、それとそっちのはどちらさんで?」 目の前の教師だと思われる人物は、兄のことを名前で呼んでおりそれなりに仲が良いと思う 俺が変な考察をしていると兄が話し出す 「こっちは僕の弟だ。今年から入学だから優しくしてやって欲しい」 九条は不思議そうな顔をして続ける 「え?お前って弟いたっけ?」 「最近父が再婚して、そしたら!なんと!弟が出来たんだ!」 兄はおもちゃを買って貰って興奮している子供のように凄く嬉しそうな顔をしていた 俺はその初めて見た兄の顔に驚きを隠せずにいた それに対して九条は驚いた様子も見せずに返事する 「へぇー、良かったな。じゃ、俺まだやる事あるからまたな」 九条はそう言って校舎の方へ姿を消した そして興奮が収まった様子の兄が落ち着いた声で俺に話し掛ける 「じゃあ学園案内行こうか」 ───── 兄の説明を聞く限りここの学園は中高一貫校らしく中学棟と高校棟で分かれている為校舎が大きく見えているらしいが、普通の中学校に通っていた俺なら分かる、普通にここの校舎デケェよ それと中高一貫で、富豪の息子が通っている学園だからか高校からの入学はひと握りしか居ないらしい 勿論俺は試験もしたし面接もした上での合格だから安心して欲しい まぁそれは置いといて、 まず学園の案内が終わったあとに大焦りしながら放った兄の言葉を聞いて欲しい 「あ、忘れてた!そういえばまだ新しい方の寮は解放されてないから架の部屋まだ入れないんだった…」 急にそんな事を言われた俺もパニクって回らない頭で答えた 「じゃあ、俺は野宿…ですか?」 寝る場所くらいはありそうな学園なのに咄嗟に野宿が出てしまった俺を見て、兄は少し可笑しそうに笑いながら続けた 「流石に野宿はされられないから今日の所は僕の部屋で休んでくれると助かるな」 俺は兄の言葉に思わず 「その手があったか」 と口に出てしまった その声に安心した兄が元気に言う 「じゃあ決まりね!」
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