雨音の余韻

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 その2女、子ロッカー室  月曜朝の女子ロッカー室は、恒例の山盛り女子トークで始まる。 二年先輩のUさんが、 「あのね、聞いて聞いて。日曜、井之頭公園近くのP会館で麻雀大会に参加したらね、すごいのよ、びっくり」  他の子が、 「何が、びっくりですか? 役満でもつもったんですか?」 「ちがう、ちがう」 「じゃ、ふり込んだとか」 「違うわよ!、麻雀とは関係ないの」 「麻雀は、置いといて」と、コントの様に両手で、正面から横にずらすしぐさををした。  私たちは、「はい、はい」と、首を縦に振りうなずいた。それから、次に何を言うのかと思わずつばをのみ込んだ。  先輩は、「あなた達の同期の新人君、すごいのよ、テニスが!」  私は、「同期のTですか、それともAですか?」と聞き返したら、 「A君よ、新人挨拶の時、テニスやってました言ってた気がしたけど、特に気にはとめていなかったんだけどね」  私たちは、課は違っても新人の時は部で紹介するから、面識はあるのだ。 先輩は、続けて 「麻雀てさ、4人じゃん。それが卓数がいくつあるかで、同時に出来る人数が決まるのよ」  私は、 「なるほど、そうなんですね。じゃ、今回の参加者は何名だったんですか?」と、聞くと 「えーと、24名。4卓だから、4×4の16名、8名余るのよ」  先輩は続けて、 「それでね、半チャンで2,3抜けのルールでやると、待ちの人は、後ろから見てるんだけど、その内、手持無沙汰になる訳よ」  私が、 「何ですか?、2.3抜けって」と言うと 「得点順よ、2番、3番が交替するの。1番には勝逃げはさせず、4番には、挽回の機会を与える。まあ、社会の縮図みたいなものね」と、自分でうなずいている。  そして、はっと我に返ったのか、 「そうじゃない、麻雀の説明じゃないの、それは置いといて」と、また、正面に習えを横にずらした。  私たちも、また、「置いといて」と返した。  先輩は続けて、 「P会館て、テニスコートがあるじゃない」 そう、P会館は、会社の厚生施設の一つで、宴会やレクレーション設備が利用出来るのだ。  私たちは、 「はい、1面ありますね」と答えた。    先輩は、 「1回目で抜けた8名って、手持無沙汰だし、座りっぱなしだったから、身体を動かしたくなるのよね」  私たちは、 「ごもっとも、ごもっとも」と口をそろえた。  先輩は、 「それでね、テニス部のSさんとW課長がその中にいて、テニスをやろうという事になったのよ」  私たちは、「ない、はい」と相づちを打つと、 先輩は続けて、 「ダブルスだから、あと二人必要じゃない。もう一人、テニス部のKさんが入って三人、そして、最後に空いていたA君に声がかかったのよ」 私たちは、指を立てながらの熱弁を聞いていた。  先輩は、 「それでね、ダブルスの組合せはジャンケンで決めたんだけど、テニス部二人コンビ対W課長+A君となった訳よ」  私は、 「それじゃ、ちょっと差が有りすぎじゃないですか」と、言った。  すると、先輩は、 「まあ、そうだけど、なんちゃってテニス部の私からすれば、遊びだから良いんじゃないってとこよ」  そうなのだ、先輩もテニス部員なのだ。 私も、勧誘されたが断った。でも、練習には数回参加したり、宴会に誘われた事もあるので顔見知りはいる。    先輩は、 「ラケットは、テニス部の二人が2本づつ持ってきていたので、W課長とA君はそれを借りたのね。経験者はわかると思うけど、ラケットって、個人によって、ガットの張りやグリップの太さが違うから、借り物って扱いづらいのよ」  私は、 「わかります、わかります」とうなづいた。  先輩は、 「それをね、そのハンデをね、感じさせないのよ、A君。ゲームが始まって、まず驚いたのは、サービス。すっごく速いの!、だって、テニス部二人が、ノータッチエース決められてるのよ、何回も。お遊びモードで始めたけど、その内、真剣になってきてさ。でも、レシーブ返せないし、ストロークでも振り回されたりで、良いとこ無し。テニス部のメンツまるつぶれ、w課長にも、‘’最近で一番楽できた‘’と、言われる始末」  私たちは、 「そうなんですか!、見たかったです」と言うと、 「うん、あれは、一見の価値ありね。その後、テニス部のSさんとKさんに誘われていたもの、入部」  テニス部は、会社の文体活動として認められており、専用のコートが優先で予約出来たり、年間活動予算や、大会参加時の交通費も支給れる、公認のクラブのだ。  その時、始業前の音楽流れ始めた。 私たちは、慌ててユニフォームのジャケットをはおり、早足でロッカー室を後にした。
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