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1.imagination
サヨナラ、そう言う君は何処か儚げだ。
僕は真夏の炎天下の中の仕事終わりに、薫を誘い、花火を嗜んだ。
君みたいなヤツが僕みたいなやつの事をダメにするんだね?
相変わらず、カオルは、そんな僕を冷めた目で見つめている。
二人きりで生きていけたら…
そう、俯きがちに、彼女は地面に目を落とした。
暫くして、落ちた線香花火が、静まると我々は、お互い一切、口を閉じ、押し黙ったまま、沈黙していた。
どうしようもなく悲しい君の瞳が、僕を物悲しくさせたまま、こうして今僕が君とあの夜の過ちから、冷めやらぬ夢をまだ、追いかけていたのと、僕自身が、君を損なった過去は、あの冷めたキミ自身の愛液から、僕は脚を蹴られ、騒ぎ喚き立てられた。
大声で金切り声を張り上げるカオルは、僕には畏怖に値した。
まだ、11歳だった。
私は26歳だった。
その時に、夏祭りの最中、私は彼女を連れて、遠くへ逃げた。
逃避行ーそう言った、馬鹿げた旅行をしたわけだ。
カオル、覚えている?
カオルはどうでも良さそうに、私の瞳を見つめ、ハァと大きな溜息をつく。
あの頃の君は、もう姿形も、微塵もない。
今の君は大人びた26歳のうら若き乙女だ。
一方の僕は41歳になっていた。
あの頃はー良かったな。
ボソッとそんな事を言ってみる。全ては、遠い過去に、答えがあった気がする。
僕は、君の瞳を眺めながら、キスをしようとした。
だが、君はその要求を止めた。
なんで?
貴方はもう、つまらなくなった。私は、もう、あの頃の私じゃないよ。貴方といろんな事をして、いろんな所へ出掛けて楽しかったよ。でも…もう、終わった。
…そんな事言うなよ
静かな静寂が嫌に不愉快だった。
僕は、捨て鉢の様にされたことがショックだった。
けれど、君は僕の事を早く忘れたいんだろう。
哀しそうな目をして、僕を一向に見向きもしない。
それで全てが終わったんだ、そう自覚した。
この世の果てが、確かにあるなら、僕は君を憶えているその記憶は、もう、振り返ってはならないんだろう。
君は、僕を忘れようとしている。
今の暮らし、夫もいる君の家庭を護る為に…
さよなら、ロリータ…
僕の中で、鮮やかな、煌めく眼差しで、満面の笑みを浮かべて、水飛沫が飛び跳ねる、そんな夏の日差しが、眩しかった。
その想い出は、もう二度と戻ってはこない。
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