更生

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更生

飛んだ汚点が私には有る。 それは女性を殴る是非については、肯定派だという事。 即ち、女に殴っても、構わないという男の身勝手な迄の歪んだ破壊願望が有る。 親父には罪だと言われたが、わからなかった。 なんで、そうしては行けないのか?さっぱりわからない。 僕は、よく化粧品売り場で、女優がmodelを努める化粧品会社の、広告にデカデカと載る、あの端正な顔立ちの綺麗な整った、歪んだまでの、完璧さと言う病に囚われたオンナの虚栄心を、損ないたいと破損願望が有る。 仕事で辛かった。 それで追い詰められて居た。 だから、家ではどこまでも、オンナに対して、ゾッとする様な横暴を働き、残虐な仕打ちを、繰り返して来た。 ひいては、自分という人間が無碍にされて来た憎悪があり、妄想に取り憑かれた。 僕は自分は大丈夫と、マトモだから、と言われて、それより重篤な重度の疾患者達が、愛されていて、僕は見放されていると、置いてけぼりされたと、卑屈な被害妄想に、歪んだ愛が、憎しみに変わった。自分より力のない、弱い人間を殴る事で、忘れていたんだ。 自分が良い人演じて、人間関係で、気を遣い過ぎるぐらい、周りの目線を気にして、病んで、自分を疎かにした。自分を大事にしなかった。 自分自身を蔑ろにして、他人の為に、自分を押し殺し、痛みに耐えて…その反動で、弱い女に対して、損壊願望が肥大化して、殺したかったンダ。 実際、僕は、女を殴りたかった。殺意はあった。 僕はオンナに殺されたから。 因果とか、宿命とか、前世なんて、そんなものは、信じちゃいないが、僕は昔から、オンナにモテた。 モテると言っても、年上の年増だったから、気持ち悪かった。 僕は若い事を心底呪った。 そのせいで、友達にも、距離を取られ、一人にされた。 僕は、オンナに、セクハラされた。 僕の罪は忘れて、自分のした事は、痛みだと、女の弱さが、如何に、女にとって、痛みだったのか、僕は自分がそう言う身体ではないから、知らなかった。 今、亡骸が、僕の前に置かれ、僕はその遺影に、うなだれている。 しかし、亡くなった人間は、どんな気持ちで、その最中を、耐えたんだろう… 僕には、彼女の殴った拳でさえ、彼女は、怖いぐらいに固かった。 殴ると、拳から血がほと走った。 滴り落ちる滴は、地中に沈んだ。 その血の滴は、今でもズキズキと、滲むように、傷口に、塩を塗るみたいに、冬場は、ヒリヒリ火傷みたいに、激痛が走る。 女はもう、この世に居ない。 死んだ人間は忘れられるが、遺された遺族は、この痛みをずっと、呪うのだろう。 僕と言う人が、その痛みに無痛でも、彼女と言う命の大切さが、わからなくても、その親御さんは、決して、赦さない。 僕の死刑を心底願う。 ゾクゾクと寒気がして、僕は、絞首刑の断頭台に、連れられて、並べられている。 ジレンマは、死への恐怖から来る。 その頃には、僕は、罪を受け入れて、死の恐怖すら、仏心に依り、開き直って居たんだ。 だが、いざ断頭に頭を突っ込み、木枠に収まり、いよいよ、死期が迫ると、唐突に、言いようの無い、震えが起きだし、膝が笑い、タガが外れた。 僕は死の恐怖を自覚した。 自分の命が、こんなにも、死にたくなかった。生を望んでいるだなんて…!!! その時に、彼女のマボロシが、僕の前に迫り、僕に語った。 ドウシタノ? 彼女は全く僕を責めて居なかった。 その時に思い出した。 殴ってる最中、彼女が一切無抵抗だったのが、妙に違和感を憶えたのが、引っ掛かって居たことを。 イタガッテクレナイト… 僕に涙を見せてくれないと… 僕はウサを張らせないジャナイカ!!!!!!!! 悪夢に染まる。目の前が、真っ逆さまに鳴る。 …刑が執行されて、僕の切断された胴体から脚の下には、糞便が、滴り落ち、汚物が、錯乱して、点在してこぼれていた。無臭の清掃員が、その後始末の汚物処理を、粛々と、静謐な空間の中、無音で執行されて、跡形もなく、執り行われると、その吊り下げられて居た胴体から、首からふり下ろされて、タダの無機質なカタマリとなり、横たわっていた。其れは、死肉となった塊になった。 僕は、死んだ事になっている。 だが、どうして、今だに僕は、夢枕に、父の厳しい躾だと言う言い訳の裏に、機嫌の悪かった父の胸の内ー内に抱えた労苦をねぎらういたわる言葉を何故掛けてやらなかったのだろう。 酒に溺れる父に、幼い私は、何故、優しい言葉のひとつぐらい、孤独な淋しい父に、投げ掛けてやらなかったのだろう その事だけがこころ残りだ。 お父さん、ごめんなさい 僕のせいで、お父さんを、これからも、ずっと生き地獄を歩ませてしまう事になって、本当に御免なさい。 ごめんなさい… 僕は、何度も何度も、謝り続けた。 生きている時はわからなかった。 死んだ跡になって、自分がした不始末を、押し付けたカタチになって、オヤジが、生き地獄を味わう事になると想うと、悔やむに悔やみきれなかった。
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