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一 「憧れの人に会いたくて」1
私には仲間がいます。
そう胸を張って言いたくて、それを信じたくて、それを確かめたくて、私は今日この場所にいる。
コトン、シュッ、ツカツカツカ。
コトン、シュッ、カッカッカッ。
この音が繰り返される。
その都度、私は少し頭を下げて、机に視線を向けている。
二メートル離れた同様の机では、
「よう久しぶり」
「元気か」
「変わってねぇなぁ」
と懐かしさを含んだ声が聞こえる。
なかには、
「何言ってんだよ。昨日学校で会っただろ」
「だな」
などと会話をしながら笑い声が聞こえてくる。
あきらかに空気が違う。同じローカで同じ学校の机を並べて座っているのに、まるで異空間にいるみたいに違いがある。
土曜日の午後二時、母校の中学校で、同窓会が開かれる。
あと十五分。
私は同窓会の幹事をさせられている。
こちらの閑静は女子受付係。
あちらの喧噪は男子受付係。
これは性別の違いではない。
たとえば人間性、いわゆる人間関係、いわば上下関係のようなものだ。
学校での友だち関係は仲の良い友だちばかりではない。
「立場」、「ランク」、「格差」、というものが存在することもある。
会費は一人五百円。机の右に置かれている箱に入れられる。コトンの音だ。
受付名簿は机の真ん中に私から見て反対にして置かれている。シュッの音だ。
なんの声かけもなく、私から離れていく。ツカツカツカ、カッカッカッの音だ。
男子の空間のように会話などない。
同窓会の準備は朝から幹事二人で行った。
同窓会のために借りた教室内に折りたたみテーブルを二つ並べて四つの場所を作った。
食べ物はお菓子やペットボトルのジュース類と紙コップをそれぞれのテーブルに置いた。
会費の一人五百円はその負担分だ。
先生が参加者予定分の会費を立て替えてくれて買い出しをした。
一応準備は万端だ。
さて、どういう経緯で私が女子の幹事を受け持つことになったのか。
これが、聞くも涙、語るも涙の話なのだ。いやいやそんな例えは必要ない。
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