三 「WEB小説って」5

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三 「WEB小説って」5

 Aさんには申し訳ないが、私はAさんのフォロワーさんから選んで読みに行くことにしていた。Aさんのフォロワーさんなら優しい人だと勝手に決め込んでいたからだ。  確かに、優しい人はいた。丁寧にコメントをくれる人もいた。中には私とは交流が始まらない人もいた。それは仕方がないことだ。  ある日、チョットしたトラブルが起きた。  Aさんのフォロワーさんの作品を読みに行ったときのことだ。いつものようにハートマークを付け、コメントを残した。作品は理路整然とした文章ぽいが、難しい漢字もあり、理解しにくい内容でもあった。でも、そんな批判めいたことは正直に書けない。 「文章がすごいですね。良いですね」と感想を書いた。  夜に感想を送った方から返信が届いていた。仮にMさんと呼ぼう。  Mさんの返信コメントを開いた。  ビックリして息をのんだ。 「小生の小説を読んでいただきありがとうござます。しかしながら、小生の文章について、一体、どこがどのようにすごいのかわかりにくい。そして何が良いのか具体的にわかりません。小生は小説を書くにあたり研究して深く追求しています。そこの所を説明せずして伝わるものがありません。」  なにこれ?  「お前程度の凡人に俺の何がわかるのか?」、「お前程度に小生の良さなど理解できる訳がないだろう。」とでも言っているように、完全に人を見下しているのが伝わってくる。  確かに一行の文章は(しっか)りしているように思えたが、作品の文章全体を考えれば、一体何を伝えたいのか理解に苦しむ。それに無理矢理難しい漢字を使用しているようにも思えた。「どうだ、すごいだろ。俺はこんな難しい漢字も知っているんだ。」と使用している語彙(ごい)を自慢でもしているように。それに(たち)が悪いのは口論を前提としたように私を追求しにきていることだ。他人の意見に揚げ足を取ろうとして、糾弾(きゅうだん)するために追求してきている。これも一種の誹謗中傷にあたると思う。  怖いと思った。  先日、インターネットで言葉の意味を調べていたことを思い出した。  インターネットでは理解できないことやわからないことや知らないことを問い合わせるコーナーもある。専門的な知識を持った方がコーナーを設けていた。とても便利で重宝されるコーナーでもある。  しかしながら、ある人が問い合わせ、質問をしたところ、理路整然とされた文章ながらとても詳しい回答がなされていた。そこまでは世の中には知識が優れたすごい人もいるんだと思った。でも回答は素晴らしいけれど、「こんなことも知らずにいるのか」、「基本的なことだろ」、「もっと勉強しろ」といった(たぐ)いの言葉が並べられ、人を馬鹿にしたコメントをして優越感に浸っている気がした。一体、そこにどんな喜びがあるのだろう。人を虚仮威(こけおど)すような行為に胸を重く塞いだ。  そんな不愉快な思いをしたことがあった。それと同じだ。  応援してくれているのに素直に喜べない人がいる。感謝できない人がいる。素直に喜んでくれれば良いものを。もし気に入らないのならスルーして欲しい。 「一人で論文でも書いてろ。他人と接するな」と言ってやりたいが、私は今後無視することを決め、いえ、二度と近づかないことを決意して、コメント欄を閉じた。  ほんとに人を見下(みくだ)す優越感とは厄介(やっかい)なものだ。
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