三 「WEB小説って」6

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三 「WEB小説って」6

 Web小説では、回転が速いというか、出入りが激しいというか、知らぬ間にいなくなる人がいる。期間的には、半年か一年くらいの活動で退会していく人が意外と多いらしい。  そのときは、星マーク、ハートマークやコメントが突如として消えるのだ。  ビックリしたあと寂しさが増した。なぜか虚しさも感じた。  私は新たな人を望まず、現時点でのフォロワーさんの作品だけ読んだり、コメントを送信したり、地道に楽しんでいた。星はほとんど増えることはなかったけど、安心と満足感は得られた。  お気に入りのフォロワーさんのホームを(のぞ)きに行くだけで楽しい。  Aさんのエッセイというか、日記のようなコーナーがあって、そこには書くためにAさんが思っていることや取り組んだことを書いているのだ。それがおもしろかったり、参考になることがあった。  まずはAさんが先輩から助言されたことだ。 「物書きを目指すなら、書いて、書いて、書きまくるんよ。そして、本を読んで、読んで、読みまくるんよ。それが一番の上達なのよ」  なるほど。と思ったが、難しいことだとも思った。  次に本の紹介があり、Aさんが過去に読んで良かったと思う作家と書籍名が明記されていた。  私はその中から興味がわいた小説を買いに行って読むようにした。  本紹介の中で、書くことにもつながることが書かれていた。 「名文を読め」という言葉だ。  この言葉は、小説家になるために、小説家を目指す人のために、受賞歴のあるプロの作家が書いた作品の言葉らしい。  ただ、Aさんは、名文には二種類がある。と書いていた。  一つは、もちろんプロが選んだ名文だ。プロには小説家や出版関係者も含まれていて、文豪の小説に多いらしい。  もう一つは、愛読書という存在である。  それは自分が好きな小説から素人が書いた作文まで範囲が広がる。なぜ愛読書という位置づけを作るのかと言えば、 「文章には人それぞれに相性というものがあります。例え国民的な文学賞を受賞した作品でも、読みにくかったり、内容が頭に入ってこなかったり、しっくりこないものもあります。自分が読んで良いと思うものが、その人の名文であり、愛読書になると思います。」  とAさんは書いていた。自分の好みを大事にすること。これには共感した。  私はAさんの説明がとても好きだ。  Aさんは何かを伝えるとき、必ずと言って良いほど、断言はしない。 「私は思います。」と言い、「感じ方は人それぞれですから、自分が良いと思うことを大切にしてください。」と付け加える。押しつけはしない。選択はあくまでも個人の自由。正解は一つじゃない。と受け方は幅広くあって良いということだ。堅苦しくなくて、強制的でなく、個人の判断や意思を尊重しているところがとても良い。 「こうでなければいけない」という断言的な説明や押しつけ型の説明は、私には息苦しくなるからだ。  気持ちの余白、心の余裕、幅広い許容範囲、のびのびと接していける感情がわくのだ。  だからAさんの作品が更新されると必ず読みに行くようになった。更新が待ち遠しくなった。  Aさんの日記を読んでいると、私には参考になることが多かった。  ひとつは、Aさんがある会長さんから学んだことだ。  ある会長さんが俳句を通して、 「他人の作品が良いと思えるときは、自分が成長しているときです。そして作品の悪いところばかり観ているときは成長していないときです。」  と教えていただいたそうだ。良いところに目を向けると良いところが吸収できる。成長につながるということらしい。  なるほどそうだと勉強になる。このことは作品だけに言えることではない。人との接し方にもつながることだと思った。欠点は誰にでもある。それよりも良いところを真似できれば、自分も少しは成長できる気がした。  もうひとつは、Aさんはショッピングや散歩をしたとき、喫茶店に入ることもあり、そんなときは周りの会話にも耳を傾けるときがあるという。それを書くネタやエピソードとして参考にするそうだ。要は、外出したときにアンテナをはることは大事ですよ。と言っていた。  どちらも良いことだと思うし、素直に共感ができた。
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