三 「WEB小説って」8

1/1

46人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

三 「WEB小説って」8

 翌日、家に帰って、自分のホームを開くと、返信コメントが届いていた。  Bさんからのコメントだ。 「A・Sさん、初めてコメントします。まずはフォロワーになっていだきありがとうございます。それからハートマークにお星様までありがとうございます。そうですか、Aさんが私のことを書いてくれていたのですね。私もAさんの作品が好きです。がんばってください。」  とても素敵なコメントだ。  Bさんは、「Aさんが私の事を書いてくれていることは知っています。」なんてことを書いたりはしない。AさんがBさんのことを書いていることは知っているはずだ。でも、私のコメントに水を差さないようにさらっと合わせてコメントをしてくれているのだ。気遣いのできるBさんのコメントは簡潔(かんけつ)で、親切(しんせつ)で、丁寧(ていねい)で、律儀(りちぎ)なところがちゃんと伝わってきた。  また一人、大切な人がふえた。素直にうれしい。  Aさんは週末に作品を更新する。Bさんはその都度更新される。  私も日記を土曜日か日曜日には更新している。  Aさんは、ほぼ毎日、他のフォロワーさんの作品を読んでいるようだ。Bさんも同じくといった感じだ。  Aさんはふと思い出したように、「元気ぃ~!」、「また読みに行きますね。」とコメントをくれる。少しずつ読みに来てくれる。コツコツとお城の石段を積み重ねるように。ピラミッドのように積み上げていく。この人は私から離れようとはしないだろう。と温かさを感じた。Bさんは、「寡黙(かもく)な読者」といった感じだ。この人も私から離れたりはしないような気がした。二人とも私には温かい。  ある日、日記の更新が浮かばず、また、小説も未だに書けないこともあり、悩み事を書いてしまった。 「私には個性がない。何をどう書いてい良いのかわからない。上手く書けない。」  といったような内容だ。投稿したあとで、フォロワーさんが退いてしまうかなと心配もしたし、後悔もした。  夕ご飯を食べ終え、部屋に戻って自分のホームを確認したとき、コメントが届いていた。  送信者はAさんだ。  コメントを読んだ。 「A・Sさん、身勝手なコメントをお許しください。」というタイトルで始まった。 「A・Sさん、今晩は。A・Sさんが、『文章に個性がない。』と悩まれていることですが、あなた自身が、心に思うことがあって、それを言葉にしたとき、それはもうあなたの個性です。個性はあなたの中にあります。なので、個性について悩んでいる人は意外と多くいますが、みなさんそれぞれに個性がありますよ。だからあなたが思うことを言葉にすれば、それで良いのだと思います。応援しています。がんばってください。じゃあね、またね~!」  なぜか涙が出そうになった。初めて人に自分の存在を許されたような気持ちだ。  下段に追伸があった。 「ただし、他人の文章、歌詞の掲載や写真(芸能人など)の投稿を無断で勝手に活用すると、著作権、肖像権にふれ、盗作につながることもあるのでお気をつけあそばせ。」  確かに。納得。素直に喜んだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加