三 「WEB小説って」12

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三 「WEB小説って」12

 平穏な日々、充実した日々、幸福な日々を過ごしていたと思っていたのに、トラブルが起きた。  Aさんのことだ。  Aさんの読書数は私からすればすごいと思う。その中で、時々、書き始めたときに読んだことがあるプロ作家の「小説の書き方」について書くことがある。  今回は、礼節、礼儀、気遣いについて書かれていた。  内容は、文豪の原稿をテレビで紹介されるときがある。最初に書かれた原稿に訂正の文章が書き込まれている原稿のことだ。それは文豪が故に許される行為であって、新人作家募集の原稿においては、投稿に際して、誤字・脱字があると選考されないことがあるということ。推敲(すいこう)する行為は最低限の心得なので気をつけた方が良い。  また、出版社のエピソードとして、横柄(おうへい)な態度で出版社に原稿を持ち込む人もいるという。出版社では売りたい作品は山ほどある。もし、常識をわきまえていない人がいたなら相手にはされないだろう。社会人としての礼儀はわきまえた方が良いという、ごく一般的な話だ。他人への礼儀をわきまえる。常識的なことで、高校生の私でも理解できることだ。  なのに、Aさんの投稿に際して、「(おど)すような文言で、人を誘導するなぁ!」、「言葉の○○○○○やろがぁ!」、と反論で恫喝(どうかつ)する言葉が並べられていた。Aさんを否定する文言も並べられていた。詳しくは書けないけど、関係ない私が読んでも恐ろしかった。  相手は私も知っているM氏だ。あの理屈っぽくて、プライドが高そうで、人を見下した言い方をしてくるやつだ。私からすれば近づいてはいけない人間である。  私はAさんに「他人への礼儀について、勉強になります。」とコメントを届けることしかできなかった。  M氏に反論のコメントなどできなかった。  こんな最低限の常識も理解できないのか。と言えるわけもない。  私はAさんを守る勇気がなく、反論できる知識もなく、恐怖心だけが残っている。ごめんなさいと心の中で謝ることしかできなかった。  私は自己嫌悪(じこけんお)(おちい)り、落ち込んだ。  でも、当のAさんは、M氏のコメントをそのまま残し、なにも言い返さなかった。  フォロワーさんには伝わるように残していたようだ。  似たようなことが起きた。Aさんのフォロワーさんで、エッセイや詩などで評判が高い人が誹謗(ひぼう)中傷(ちゅうしょう)の被害にあった。人格を否定する文言まで書かれていたのだ。  そのとき、Aさんは、エッセイ・日記コーナーに、「誹謗・中傷・暴言」について書いた。 「以前、私は文章には相性があると書きました。作品は人それぞれで、自分に合う合わないは読者の自由です。良い作品や好みの作品に出会えれば素敵なことです。ですが、もし、自分に合わない、好まない作品ならば、無視すれば良いことです。それでも納得がいかなければ、それ以上の作品を自分で書き上げて、人を感動させればいいことです。自分が努力をすれば良いのです。それを気に入らないからといって、その人に誹謗・中傷、暴言を投げつける行為は違うのではありませんか。こちらでは『誹謗・中傷・個人否定・政治的な意図』などの表現はルール違反であり、規約違反にあたります。こちらで活動するにあたり、何を書いても良いという訳ではありません。また、不特定多数の人が閲覧できるので、内容によっては名誉毀損(めいよきそん)になる場合もあると思います。運営さんは私たちの登録数や閲覧数などで、企業から広告料などの収益を得ています。なので、運営さんにも管理責任はあると思うので、ルールを守れるように対応して欲しい。」  といったことを書いていた。  Aさんがこのような意見を伝えるのは珍しいことだ。  今回は断言している。他人を否定するなら自分が努力しろ。と言っているのだ。  受け取り方は、人それぞれだと個人個人の判断に(ゆだ)ねられていない。  ルール違反、規約違反だと明記している。  それにフォロワーさんがみんなで目を光らすことも大事だと書いていた。みんなで守る。良いことだと思う。  Aさんは、「人を苦しめる権利など認められない」と言っているのだ。  おそらく、誹謗・中傷・暴言の被害にあったフォロワーさんのために投稿したのだろう。  私も賛成だ。同意もするし、共感もする。ビクビクおびえながら、不安を抱えながら、嫌な思いを抱いて過ごさなければならないなんておかしいと思う。  やはり、安心して活動したい。(なご)みを感じたい。楽しみながら過ごしたい。  この場所は、希望や温かさの「光」が持てる場所であって欲しい。 それなのに、私にできることは、Aさんの意見に、いいねやハートマークを入れるだけで、あまりにも小さい。力になれない。とても辛い。  その日から被害者のフォロワーさんには応援や励ましのコメントが多数届けられた。  これは被害者のフォロワーさんが今までの活動を通して、人として、人格的にもいい人だと思われている(あかし)だ。支える人たちがいるからこその結果なのだ。  すごいことだと思った。  被害を受けたフォロワーさん、それを支えるフォロワーさんも、どちらも人としてすごいと。
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