46人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
一 「憧れの人に会いたくて」3
中学の頃、凜を中心とするグループは6人で、凜と百花と間宮菜月が商業高校へ進学した。菜月はバレーボールの部活をしているので今でも関係性があるのかどうかは知らない。
あと、上条結衣と向田陽菜と林真央は進学校のT高に通っている。
中学の友だちでも親友となれば付き合いは続くと思うけど、そうでなければ新しい友だちもできるし、通学時間やら学校の違いで生活時間も違ってくる。何よりも顔を合わせないことが大きく左右する。自ずとつながりが薄れていく。
風見君が簡単に経緯を説明をしてくれた。
風見優太君、西島蓮君、石橋拓海君の三人は地元から一番近いK高の普通科に進学していて、三人は同じクラスだという。
最初は男子同士で同窓会の話がでた。
高校三年、進路話の最中で卒業についても話題にあがった。といってもまだほぼ一年は残っている。でも、夏になれば受験に向けて塾の夏期講習やら受験勉強で忙しくなる。夏が勝負だからだ。遊んではいられない。それに同じ県内に進学するとは限らない。県外へ出る人も多い。中には進学ばかりではなく、就職する人もいる。当然、県外へ出る人もいる。そう、もう簡単には会えなくなる。同じ高校ならば高校で卒業間近に会うこともできるし、そういう機会もある。高校が違う中学の同級生とはそんなに会う機会はほとんどないだろう。
ということで、今回は中学三年のクラス、それと時期は5月の連休中ということに決まったそうだ。
同窓会を開催するまでの経緯は理解できた。理解はできるが、やっぱり幹事は荷が重い。
往生際の悪い私はもう一度抵抗を試みた。あわよくば避けたいという希望を抱いて。
「やっぱり幹事はできないよ。私には無理」
風見君も引き下がらない。
風見君にはある思いがあったのだ。
風見君は今度の同窓会でどうしても会いたい人がいるらしい。
ヒューヒューと口笛でも吹いて冷やかしたい気分だ。
でも、その名前を聞いたとき、私はドキリとした。身体が少し震えた。瞬時に足下から頭の先まで電気が走り抜けたようにジーンとしたのだ。
「真田葵さんに会いたいんだよね。今でも気になってるんだ。話したことなんかないのに」
「何、好きなの?」
「いや、そうでもないというか、そこまでとは言えないというか、告白したい、とはまた違う気もするけど。真田さんって、中学のときから気になってたんだよね。なぜか視線が行くっていうか、何してんだろうって、思い出すっていうか、インパクト半端ねぇし、未だに気になる存在なんだよ。卒業してもう二年は過ぎてるのに。これって恋か?」
私のことは「西内」って呼び捨てなのに、真田さんのことは「さん」付けで言う。
その使い分けはわからないでもないが、あからさまに差を付けて直接言われると、ちょっとカチンとくる。
「知らないわよそんなこと。私じゃないのに」
私は突っ慳貪に言いながらも、実は気持ちが傾いた。
真田葵さんは私が密かに憧れていた人だ。
背が高くて、髪はロングのストレート。いつも清潔感が漂っていた。
中学のときから同い年とは思えないほどしっかりしていて、何事にも動じず毅然として、雰囲気が凜として、孤高を持する人と言えば良いのか、超然とした人と言えば良いのか、身体全体から品がにじみ出ているようにも思えた。これをオーラというのかもしれないが、あらゆる賞賛の言葉が当てはまり、似合う人だ。
でも、それだけではない。
彼女はいつも一人でいたけれど、「孤独」と言う表現は似合わないのだ。
一匹狼、一匹の白い狼、ホワイトオオカミという言葉が似合う人だ。
ウルフではなくオオカミという表現の方が良い。
女の子に「狼」とイメージを付けるのは失礼かもしれないけど、私には一番似合っていると思えたネーミングだ。
最初のコメントを投稿しよう!