四 「私に仲間は……」5

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四 「私に仲間は……」5

 真田さんが私に目を向けて()(ただ)した。 「あなたも再会できて良かったじゃない。じゃあ、あなたは何を悩んでいるの?」  私は学校とかで人間関係が上手くいってない。私がすがるもの、すがっているのはWeb小説の世界というか場所だから、相手の実態がわからないし、実像が見えないのが現実。でも私はそこでしかちゃんと交流ができていない。本当に仲間だと思って良いのかどうか不安だと伝えた。 「仲間かどうかはあなたが決めることじゃないの。自分が感じることでしょ」 「そうなんだけど、真田さんなら信頼できるし、信用できるから。同意者がいないとわからなくなって」  私は言い終えるとうつむいてしまった。  真田さんはすぐに視点を変えて意見を述べてくれた。 「あなたが言いたいのはフォロワーさんの姿を見たことがない。実態や実像がわからないから、ということでしょ。チョット話が変わるけど、私は人を判断するとき、心地よい言葉を言ってくれる人よりも、その人がどういう行動や行為をしてくれたかで判断をしています。私を良いと言ってくれる人はいるけど、いざとなったら、『冷たい人』とか『クールな人』とか言われることもあります。自分の望みや願いを全部聞き入れてくれないときに、『やっぱり』を前に付けて私を悪く評価するの。そうなると今まで良いことを言ってくれてた人が距離を置くようになる。よく芸能人の人が言ってるじゃない。『人気のあるときはちやほやして集まってくるけど、人気が落ちたときには見向きもしなくなる。そんなとき誰が自分のそばにいてくれたかで、大切な人とそうでない人がわかる』って。『人の行為、行動で判断することが大事だと気づかされた』とか告白してる人がいるでしょ。それと同じじゃない。さっきあなた自身が言ったでしょ。自分が悩んでいることを打ち明けたら、フォロワーさんからはげましのコメントが届いたって」  私は素直に頷いた。  真田さんが続けて話をする。 「あなたが支えられている場所、Web小説の世界で、あなたの悩みに対して、コメントを届けたフォロワーさんたちは、あなたにどういった言葉を伝えてあげようか。と考えたはずよ。まず、あなたの悩んでいることは何かを考え、どう言えば伝わり、はげますことができるのかと。実際に出会って話すことは出来ない。その分、言葉の選択に気を遣う。そこに時間と思考と伝達という行為が生まれます。そして言葉を届ける。何を言ってくれたのか、それを受けてあなたがどう思ったのかは、私にはわからないけど、それはフォロワーさんの『心ある行為』という形になっていると思う。相手の実態や実像がわからなくても、言葉にする思いや行動は嘘にならないでしょ。あなたの言葉を読んで、あなたのために考えて、思いやりのある言葉を伝えてくれた。その行為に相手は大切な時間と思考と心が動いているんだから。実像が見えなくても相手の行為は事実だと私は思うけど」  核心を突いた言葉が私の心にまっすぐ届いてくる。そこに下品な意味は含んでいない。真意、純真、真心が含まれている。  真田さんの言葉には知悉(ちしつ)した生き方が伝わってくる。言うこと全てがごもっともと頭が下がる思いだ。
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